いまだにファンの集いが自主的に開かれている野球雑誌『野球小僧』(白夜書房)。昨年、残念ながら休刊してしまったが、プロ野球選手に得意分野とは真逆の質問を投げ掛ける名物企画「俺に訊くな!」をリスペクトを込めて復活させて頂き、元広島の佐々岡真司氏(45)に「松井秀喜の抑え方」を聞いた。
FAの権利を行使することなく、佐々氏は広島一筋18年で138勝を挙げた。そんな赤ヘルのエースが避けて通れなかったのが巨人だった。実は巨人の四番、松井秀喜氏がヒットを放った投手の3位が佐々岡氏で33本。同じく本塁打も6本でこれは8位。言い方は悪いが松井氏にカモにされていたのが佐々岡氏だったのだ。
そこで佐々岡氏に、松井攻略法を教えてください、と質問したのだが……。
「ハァ、松井?(と意味が分からなかった様子)」
記者が松井氏に打たれたという数字を説明する。「なるほど、たしかに打たれた印象がありますね」と佐々岡氏。だが、攻略法については黙して語らない。
そこには佐々岡氏なりの矜持があるようだった。
「セ球団の選手にとって巨人戦というのはすごく力の入るカードなんですよ。しかも相手が四番の松井君であれば、力でねじ伏せてやろうという気持ちになる」
立ち向かうのは名門球団。チームを鼓舞するにはエースの気迫を前面に出す必要があった。佐々岡氏が得意としたのは縦に割れるカーブだ。ただ変化球でカウントを稼いでも、「最後は直球で打ち取りたい」との気持ちが強かったという。
「長打を避けて、ランナーのいない場面ならヒットを打たれてもOK。その分、勝負しようという気持ちにさせてくれるバッターでした。他チームの四番は外国人の中、彼だけは和製ホームランバッターだからね」
もちろんビデオでも研究したし、スコアラーからもデータはもらっていた。だが、いざ対峙すると滾るものがあったという。
「ど真ん中を空振りさせたら最高ですよ。客観的にみたら打たれているのでしょうが、自分の球で勝負したなか、それなりに抑えたという思いもあるんですよ」
その言葉からは赤ヘルのエースの意地が感じとれた。
※週刊ポスト2013年8月16・23日号