暴力団と対峙することも躊躇わず、凶悪な事件を繰り返し起こしてきた半グレ集団。今年3月、警察庁は元暴走族の「関東連合」や中国残留孤児2世、3世から成る「怒羅権(ドラゴン)」を「準暴力団」と位置づけ実態解明に乗り出した。
今後、裏社会の勢力図にどのような変化が起きるのか。首都に群雄割拠する半グレ集団の実態に迫った。
2012年9月に東京・六本木のクラブで発生した飲食店経営者殺害事件で、警視庁は今年1月21日までに、暴走族グループ「関東連合」OBとその関係者計18人を逮捕した。主要メンバーの大半が逮捕されたことで、関東連合はかつての勢いを失いつつあると言われている。
しかし、半グレ集団の一掃は一筋縄ではいかないようだ。ルポライターの小野登志郎氏が語る。
「世間一般では『関東連合』とひと括りで語られていますが、警察当局が把握している中心メンバーはわずか20~30人と言われています。明確に組織化された集団ではないので表面化しませんが、関東連合の息のかかった人間は他にもたくさんいて、相変わらずヤミ金経営や振り込め詐欺で大金を稼いでいる。
実際、六本木事件の主犯格とされるリーダー格の男が現在も海外逃亡を続けられるのは、潤沢な資金源があるからと見ていい。仮に関東連合が無くなっても、半グレと呼ばれる有象無象は次々と現われますし、それを根絶することは土台、不可能なのです」
警察当局が手を焼いているのは、暴力団と違い半グレ集団には組織としての実態がないからだ。
「関東連合をはじめ、半グレ集団にシマ(縄張り)の概念はほとんどありません。利害関係さえ侵さなければ特定の相手と抗争に発展することもない。つまり個人商店の集合体のようなものなのです。関東連合の主要メンバーが逮捕されてからは、その個人商店化がより加速しています」
そう話すのは、ノンフィクション作家の窪田順生氏だ。関東連合は、主に六本木や麻布、渋谷を活動の場にしていたが、それは縄張りという性質ではなく、たまたま彼らの行動範囲がそのエリアだったに過ぎないのだという。
「彼らのシノギは多岐にわたります。脅しや強請り、詐欺といった裏稼業だけでなく、飲食や不動産業などの合法ビジネスで稼いでいる者も多い。
しかし、カタギを装っている連中も、いざトラブルになるとその本性をむき出しにする。単なる脅迫や暴行では収まらず、相手が虫の息になるまで痛めつけてしまうところに彼らの危険性があります」(窪田氏)
※SAPIO2013年9月号