スポーツ

ダルと松坂のツーシームの違いは「回転軸の角度」と大学教授

ボールと空気の関係について研究する溝田武人氏

 カーブが「魔球」と呼ばれた時代から現在、変化球の種類は細かく分類すれば数十種類にも増えた。新たな「魔球」が続々と生まれ、進化は加速している。変化球を科学的に分析するとどうなるのか。

 ボールと空気の関係について研究している福岡工業大学教授の溝田武人氏に、大リーグで活躍するダルビッシュ有投手のツーシームを巨大な風洞実験装置で再現してもらった。

 巨大な風洞の中に8本のピアノ線で固定されたボール。回転軸の向きは打者に対して少し右向き、当てる風速は時速140m、スピンの回転数は投手から見て時計回りに秒速40回転に設定された。

「例えば松坂のツーシームは回転軸が打者に対してまっすぐですが、ダルビッシュはちょっと右に傾いているんです」(溝田氏)

 実験で表われた変化は、すぐにピンと張られたピアノ線を通し、数値化されてパソコンに届く。

「この値を分析すると、投げた瞬間は絶好球に見えるボールが、手元でグンと右方向に曲がっていることが分かります。これが打者が打ちにくい要因です」(溝田氏)

 現代野球ではバットの芯を外すために、ストレートでもツーシームやムービングファストボールなど、打者の手元で微妙に“動く球”が多く投げられる。また、ナックルのように不規則な変化をする球を得意とする投手もいる。

 こういった一流投手が巧みに操る様々な変化球を再現できるピッチングマシンを研究しているのが、金沢大学助教の酒井忍氏だ。

「変化球は、球速とボールの回転数、それに回転軸の傾き方、この3つで制御することができます」

 そう語る酒井氏の研究から開発された「SA- 91」というマシンは、3つのローラーの回転数を0.01単位まで調整でき、フォークやシンカー、チェンジアップなど、ほぼ全ての変化球を投げることができる。

「今後はローラーを4つにしたり、縫い目の影響まで考慮した設計で、さらに細かい変化をつけられるようになると思います」(酒井氏)

 科学の力が未知の魔球を生み出す日も近いかもしれない。

撮影■渡辺利博

※週刊ポスト2013年8月30日号

関連記事

トピックス

前橋市議会で退職が認められ、報道陣の取材に応じる小川晶市長(時事通信フォト)
《前橋・ラブホ通い詰め問題》「これは小川晶前市長の遺言」市幹部男性X氏が停職6か月で依願退職へ、市長選へ向け自民に危機感「いまも想像以上に小川さん支持が強い」
NEWSポストセブン
3年前に離婚していた穴井夕子とプロゴルァーの横田真一選手(Instagram/時事通信フォト)
《ゴルフ・横田真一プロと2年前に離婚》穴井夕子が明かしていた「夫婦ゲンカ中の夫への不満」と“家庭内別居”
NEWSポストセブン
二刀流かDHか、先発かリリーフか?
【大谷翔平のWBCでの“起用法”どれが正解か?】安全策なら「日本ラウンド出場せず、決勝ラウンドのみDHで出場」、WBCが「オープン戦での調整登板の代わり」になる可能性も
週刊ポスト
高市首相の発言で中国がエスカレート(時事通信フォト)
【中国軍機がレーダー照射も】高市発言で中国がエスカレート アメリカのスタンスは? 「曖昧戦略は終焉」「日米台で連携強化」の指摘も
NEWSポストセブン
テレビ復帰は困難との見方も強い国分太一(時事通信フォト)
元TOKIO・国分太一、地上波復帰は困難でもキャンプ趣味を活かしてYouTubeで復帰するシナリオも 「参戦すればキャンプYouTuberの人気の構図が一変する可能性」
週刊ポスト
世代交代へ(元横綱・大乃国)
《熾烈な相撲協会理事選》元横綱・大乃国の芝田山親方が勇退で八角理事長“一強体制”へ 2年先を見据えた次期理事長をめぐる争いも激化へ
週刊ポスト
2011年に放送が開始された『ヒルナンデス!!』(HPより/時事通信フォト)
《日テレ広報が回答》ナンチャン続投『ヒルナンデス!』打ち切り報道を完全否定「終了の予定ない」、終了説を一蹴した日テレの“ウラ事情”
NEWSポストセブン
青森県東方沖地震を受けての中国の反応は…(時事通信フォト)
《完全な失敗に終わるに違いない》最大震度6強・青森県東方沖地震、発生後の「在日中国大使館」公式Xでのポスト内容が波紋拡げる、注目される台湾総統の“対照的な対応”
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン
「交際関係とコーチ契約を解消する」と発表した都玲華(Getty Images)
女子ゴルフ・都玲華、30歳差コーチとの“禁断愛”に両親は複雑な思いか “さくらパパ”横峯良郎氏は「痛いほどわかる」「娘がこんなことになったらと考えると…」
週刊ポスト