「うちの息子はまだ内定をもらっていないのですが、大丈夫でしょうか」──昨今の大学には、学生の保護者からこんな相談が山のように寄せられる。
就職活動は、もはや学生だけの問題ではなく、家族全体を巻き込んだ一大プロジェクトなのだ。であれば、家族に大学生を持つ父親、祖父も、最近の就活事情を知らないわけにはいかない。
昨年まで8年間にわたって東京女学館大で経営学を教え、多くの教え子を一流企業に送り込んできた“就職請負人”の西山昭彦氏(現・一橋大学特任教授)が、内定を得るための「3つの掟」を伝授する。
【目指す会社は「3段階」に分類せよ】
文系男子なら三菱商事、理系男子ならJR東日本、文系女子なら東京海上日動火災、理系女子ならロッテ──昨年の男女学生はこんな企業に憧れた。だが、西山氏は「もっと冷静な企業選びを」と警鐘を鳴らす。
「第1志望が憧れの企業でもいいのですが、超一流企業だけでなく、中堅どころも第2候補として、しっかりピックアップしておくべきです。さらには、一流企業の関連会社、規模や知名度は劣るが堅実な企業も第3グループとして目配りを忘れてはいけません」(西山氏。以下、「」内同)
要は、憧れの企業を目指しつつ、第2グループ企業が身の丈に合うように活動していく。
「就職と結婚はよく似ています。希望条件を下げていけば、どこかで釣り合いますし、身の丈に合った相手と出会うことで、お互いが幸せな未来を築けます」
【“満員電車”の企業にこだわるな】
近年はネットによる応募が一般化し、就職戦線全般の“高望み化”が目立つ。「毎年、30社以上も受けたが全敗だった、という事例がマスコミで報道されます。でも、そういう学生ほど“満員電車”に乗りたがるという共通項があるんです」
満員電車とは、前項でもふれた人気企業やNTTドコモ、ANA、JTB、オリエンタルランドといった会社だ。
「内定倍率が1000倍を超える満員電車に乗って、空席を探すのは至難。でも、別路線にはガラガラですぐ座れる電車もあるんです」
それでも学生の一流企業=有名企業志向は根強い。
「ところが、業績面では優良にもかかわらず、知名度が低い会社は日本にたくさんあります。視野さえ広げれば、無理で無駄な就活をしなくても、競争率の低い、自分にぴったりの企業が見つかるはずです」
【あまり知られていない超優良企業がごまんとある】
東証一部、二部、マザーズなどを合わせると日本には3409社(7月31日現在)もの上場企業があるにもかかわらず、その中で学生が知っているのは、僅か5%といわれている。
「商社を除く人気企業のほとんどが、消費者向けのサービスを展開しており、必然的にテレビCMや新聞広告での露出も多くなります。就活で人気が集中するのも、わからないではありません。
ところが、超優良企業の多くは、企業―消費者(BtoC)というビジネスではなく、企業―企業(BtoB)という取引を展開しています。自動制御機器・計測機器で利益率トップのキーエンスや半導体試験装置のアドバンテストがそうですし、iPhoneの部品を多く製造する村田製作所もBtoB企業の代表です」
これらの企業はいずれも東証一部上場。学生が知らないだけで、世界に伍している企業はごまんとある。
「大手企業の子会社もお薦めです。天下りがあるから、叩き上げでトップになるのは難しいでしょうが、福利厚生や社内体制は親会社に準じていますし、何かと話題のブラック企業とは縁遠い存在でもあります」
※週刊ポスト2013年8月30日号