「性生活報告」は創刊32年、現在も部数1万部以上を誇る熟年投稿雑誌である。ネットやDVD全盛時代にあって、人々が「活字の性」を求めるのはなぜか。同誌三代目編集長の穴見英士氏が語った。
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戦後68年、平成も25年となり本当に昭和は遠くなった感があります。その昭和を謳歌した人達の熱い性生活体験を記録する場として32年前に創刊されたのが「性生活報告」です。
現在60代、70代の世代は、昭和に青春時代を過ごしました。1960~1970年の東京オリンピック、安保闘争を体験し、1980年からの高度成長時代からバブルがはじけるまでを身をもって目撃しました。昨今の世界経済危機に較べれば、まだ夢や希望があった時代でした。自由の有り難さに酔いしれた時代でもあります。現代のIT化された無機質な性よりも、いわゆる「三丁目の夕日」時代の濃厚な人間関係があった昭和の「性生活」は大らかで、激しく、逞しく、そしてどこか優しさにも満ちています。
確かに昨今のDVDやネット動画は激しい性描写がこれでもかと展開しますが、そこにはSEXの微妙な恥ずかしさもなければ情感も無いような気がします。若者の自慰行為にはそれで充分かもしれませんが、そこに感情移入することはできない。一方、「性生活報告」の読者は、物語上の性描写を自らの過去の性体験や、身近な女性との妄想上の性に重ねたりして、こっそりと興奮できる──これこそ活字の魅力です。
「性生活報告」の読者は、還暦を迎え一線を退いた年金世代から80歳前後です。投稿内容も昭和30年代から昭和50年代に体験したプライベートな性生活手記が多い。未だに手書きが7割。400字詰め原稿用紙10~50枚に、小さな字でみっちり書かれた文字からは、性への熱量を感じさせます。
ただ、最近は他の雑誌に取り上げられることもあって、現役の50代なんて読者も珍しくはなくなりました。メール投稿も増えましたね。投稿内容にも変化が見えつつあります。最近は団塊世代の同窓会がらみの不倫告白がトレンドで、老人施設を舞台にした色恋沙汰投稿なんてものまであります。
時代の移ろいとともに性のカタチも変遷していくでしょう。私たち「性生活報告」はこれからも読者とともにリアルな性の世界を探求、記録していくつもりです。
※週刊ポスト2013年8月30日号