1皿105円や120円で寿司を提供する回転すし店。客は「こんな高級魚をこんなに安く食べられる!」と喜ぶが、これは果たして企業努力の賜物だけだろうか。ジャーナリスト・吾妻博勝氏がそのカラクリを明かす。
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見た目で言えば、銀色の魚体に白い斑点模様が毒々しい「アカマンボウ」はかなりのインパクトがある。こちらが「カジキ」に化ける。ちなみにカジキはスズキ目の魚だが、「カジキマグロ」という俗称があるため、「マグロの一種」と勘違いしている人が意外と多い。日本では魚の俗称が多く、これが消費者の混乱を招く一因となっている。
アカマンボウは世界の熱帯・温帯海域、日本では北海道以南の海域に生息する深海魚だ。最近では「マンダイ」という名でスーパーの店頭に並ぶこともある。価格はキロ当たり1000円以下と安く利益率も高い。そのため、回転寿司では代用魚の「優等生」と呼ばれている。
アカマンボウは、マグロのクズ肉とともにフードカッターで細かくされ、人気メニューの「ネギトロ」の材料として用いられることもある。
ネギトロに「メバチ」や「キハダ」などの安いマグロを使う店も多いが、その場合もトロは使われず、赤身にラードや植物油を練り合わせ、「トロ風」の味付けをしたものが提供される。味付け用の業務用調味料が販売されているほどだから、安い回転寿司で本物のネギトロを食べようとは思わないほうがよいだろう。
※SAPIO2013年9月号