LCC(格安航空会社)の国際線拡充を背景に、今年の海外旅行者数は1870万人と、過去最高が予想されている。それとともに売り上げを伸ばしているのが、機内持ち込み可能な小型バッグやケースだ。なかでも今年2月の発売以来好調な売り上げを続けている、ある商品が注目されている。
航空会社や機材によって幅はあるが、機内に持ち込めるバッグやケースには、高さ・幅・奥行きと3辺の合計の上限が決められている。その制約の中で、容量40リットルというクラス最大の収納力を実現したのが、2011年に発売されたエースのハードケース『プロテカ マックスパス エイチ』だ。発売以来、年間1万2000個も販売する、大ヒット商品となった。
その進化モデルが『プロテカ マックスパス エイチ オープンタイプ』。大ヒット商品の最新版がはやくも今年はじめに発売されたのは、なぜなのか?
「バッグ業界は時代に敏感に反応し、トレンドを常に商品に取り入れています。バッグやケースは壊れにくいので毎年のように買い換える人は少ないのですが、ファッション性や機能性をアップさせることで、毎年確実に進化しています」
そう答えてくれたのは、『プロテカ マックスパス エイチ』の開発に携わった吉原勇一だ。
吉原ら開発メンバーが『マックスパス エイチ オープンタイプ』の開発をはじめたのは、『マックスパス』のハードケース版である『マックスパス エイチ』が大ヒットしていた真っ最中のことだった。
「定番商品だからといってなにもせずに手をこまねいていたら、すぐに他社に追いつかれる。『定番を進化させろ』というのが、我が社のモットーです」
では、ヒットモデルを“進化”させるためには、どこに手を加えればいいのか? 吉原らは羽田や成田などの空港に足繁く通い、旅行者のスーツケースを観察した。そこで得られた情報には、2つのポイントがあった。
まず、ハードケースが主流になりつつあること。ハードケースは壊れにくい上に最近は軽量化も進んでいる。カラーも豊富でファッション性も追求できる商品が、若い世代を中心に人気が高くなっていたのである。
そして、小物をすぐに取り出せるポケットが必要だということ。慌ただしいビジネスマンにとって、手荷物検査でもたつくのは、避けたいことなのだ。
そこで吉原らが下した決断は、次のようなものだった。機内持ち込み可能なサイズのハードケースで、最大容量は40リットルを確保する。その上で大型の収納ポケットを付けて、PCやスマホなどの小物が容易に出し入れできるようにする──。
試作品を作り直しては吉原がチェックし、修正する──その繰り返しが続いた。そして、約3か月後。あがってきた試作品に、デザイナーの「これがベスト」というメッセージが添えられていた。それは、本体内に食い込ませるようにファスナー開閉式の大型ポケットが設けられていた。PCやタブレットを入れるのに十分な大きさ。バッグ本体の外寸は、『マックスパス エイチ』とまったく同じだった。
それが『プロテカ マックスパス エイチ オープンタイプ』と名付けられて発売されるや大ヒット商品となり、同社の新たな定番商品になりつつある。
「“飛行機の搭乗をスムーズにしたい”と考えているのは、ビジネスマンに限りません。このメリットを、さらに多くの旅行者にアピールしたいと思っています」
■取材・構成/中沢雄二(文中敬称略)
※週刊ポスト2013年8月30日号