大人気ドラマ「半沢直樹」でメガバンクの就活が人気!? ドラマ、漫画が就活に与える影響を作家で人材コンサルタントの常見陽平氏が考える。
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今年はドラマの当たり年ですね。NHKの朝の連続ドラマ『あまちゃん』も大人気ですが、同様に人気を集めているのがTBS系の日曜劇場『半沢直樹』です。池井戸潤氏の企業エンターテインメント小説『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』(ともに文藝春秋)が原作です。バブル末期に大手都市銀行(今で言うメガバンク)に入行した主人公半沢直樹の企業社会での奮闘を描いたドラマです。
ビデオリサーチの調べによると、8月11日に放送された第5回は平均視聴率が29.0%、瞬間最高視聴率が31.9%でした。名セリフ「やられたら倍返し!」は、『あまちゃん』の「じぇじぇじぇ」と並び、今年の『新語・流行語大賞』で大バトルになりそうですね。
さて、最近、よく質問されるのが「『半沢直樹』ブームで、学生の就職希望先としてメガバンクの人気は上がるのか?」という素朴な疑問です。結論から言うならば、影響はあるでしょう。ただ、そもそも2014年卒から2015年卒にかけて、メガバンクをはじめとする金融機関の人気は間違いなく上がるので、『半沢直樹』がどこまで影響を与えたかは、測定しにくいというのが率直のところです。つまり、『半沢直樹』が放送されていなくても、金融機関の人気は上がっていたのではないか、ということです。
ドラマやアニメ、漫画などが若者の就職や進学に与える影響は、正確には把握しづらいですが、やんわりとは影響があるのではと言われています。進学に関して言うと、1990年代前半に北海道大学獣医学部の人気が上がったのは『動物のお医者さん』(佐々木倫子 白泉社)の影響だと言われています。同作品で札幌のH大学獣医学部が描かれたのです。2005年ごろに東大の出願者の数が対前年比で1.2倍になったのは受験勉強漫画『ドラゴン桜』(三田紀房 講談社)の影響だと言われています。就活においても、2010年前後の有名大学における総合商社人気に当時ドラマ化された山崎豊子さんの『不毛地帯』(新潮社)が一役買っているのではないかという声はありました。
今回の『半沢直樹』が、どこまで銀行の仕事をリアルに描いているのかは賛否あると思いますが、関心を高めたという意味では、人気アップに貢献するでしょう。
とはいえ、2012年12月から2013年の春にかけて日経平均株価も回復する中、また新卒採用の求人も回復する中、金融機関の人気はもともと上がっていたのですよね。
この春、日本経済新聞に掲載された人気企業ランキングは、すべて金融機関だったことがネット上でも話題になりました。
2014年度新卒人気企業ランキング
1位 日本生命保険
2位 東京海上日動火災保険
3位 第一生命保険
4位 三菱東京UFJ銀行
5位 三井住友海上火災保険
6位 三菱UFJ信託銀行
7位 みずほファイナンシャルグループ
8位 三井住友銀行
9位 三井住友信託銀行
10位 明治安田生命保険
(日本経済新聞社調べ)
1位〜3位は保険でしたが、3メガバンクはすべてランクインしています。
もともと、景気の各指標、そして新卒の求人が回復する局面では金融機関の人気が上がりやすいのですよね。理由は次のようなものです。人気企業ランキングの特性を反映しているとも言えますが……。
1.もともと大手、有名企業であり学生から認知されやすい方である
2.女子学生に一般職や特定総合職で長く勤められるイメージを訴求している。
3.大量採用を行う(そして金融機関同士で競争が生まれる)
4.親からの支持を集めやすい
5.(先行きはわからないが)金融市場自体の盛り上がっている感が伝わる
などが理由です。
特に意外に大事なのは3と4ですね。そう、人気企業ランキングのあまり知られていない法則に、「大量採用を行う企業は人気を集めやすい」というものがあるのです。1980年代後半のバブル期、2000年代半ばの売り手市場の時期などは、金融機関の大量採用は「本当に、ここまで採るのか?」と驚くほどでした。私が人事をしていた2000年代後半においては、3メガバンクだけで採用予定数が5000人超になったことも。この局面では信託銀行や証券、生損保も負けずに採用活動に力を入れるわけです。学生への認知が高くなり、その分、人気がアップするというわけです。
現在の就活生は、親と相談をする学生が7割を超えています。親としては、安定しているイメージなどからやはり金融機関を推すわけです。
『半沢直樹』ブームはさらにこの追い風となりそうですね。
まあ、人気企業ランキングは、あくまで就活初期段階での人気ランキング、認知度ランキングであって、優良企業ランキングではないのですけどね。いっぱい稼いで、お世話になった方に御礼を倍返しできたらいいのですけどね。先のことはどうなるかわかりません。はい。