近ごろ、家電業界では、“ジェネリック医薬品”ならぬ“ジェネリック家電”が注目を集めている。有名メーカーの商品ではないけれど、必要な性能を持ち、値段はかなりリーズナブルだ。
「売り上げを伸ばすきっかけとなったのは、東日本大震災です。震災後、節電志向が強くなり、エアコンより省エネの扇風機が売れに売れました」
こう話すのは、家電コーディネーターの戸井田園子さん。家族の絆が見直され、家で食事をすることが増えたことで、ホットプレートやフードプロセッサーなどの調理家電も人気が出ているという。
「そうした家電製品をかなりリーズナブルな価格で発売しているのが、いわゆるジェネリック家電のメーカーです。最近では家電量販店でも取り扱われるようになり、一般的にも認知されるようになりました」(戸井田さん)
ジェネリックとは、「一般的な」、「ブランドに囚われない」、「無印の」といった意味の英語で、特許の切れた医薬品を表すのに使われはじめた。そこから、機能的にはまったく見劣りしないが、あまり名前を聞いたことのないメーカーが製造している家電が、『ジェネリック家電』と呼ばれるようになった。
山善(本社・大阪)、オリオン電機(本社・福井)、アイリスオーヤマ(本社・宮城)といった企業が、ジェネリック家電を発売しているメーカーにあたる。
現在は、ほとんどの家電量販店で取り扱われているが、“ジェネリック家電コーナー”などがあるわけではなく、あくまで、有名メーカーの陰や売り場の隅に積まれていることが多い。目印は「あまり聞いたことのないメーカー名」と「安さ」だ。
山善の広報担当・坂田正則さんはこう話す。
「私たちが生活家電に取り組みだしたのは、1980年頃です。こたつや扇風機などホームセンターでのオリジナル商品を手掛けたのが始まりで、より独自性の高い商品の開発に取り組むようになりました」
これまで、特にスポットライトを浴びることはなかったが、震災以降は取材を受ける機会も増えたという。
「節電志向に加え、不景気の影響で、“嗜好性の高いものにはお金を惜しまないが、それ以外にはコストをかけない”といったお客さまの意識の変化が大きいと思います」(坂田さん)
山善では、“シンプル、かつベーシック”というコンセプトのもと、大量生産を実現するために徹底した市場調査を行い、ムダと思える機能を省き、生産効率を高めているという。それによって、コストも安く抑えることができる。
「2000年代に入り、委託工場がそれまでの台湾から、中国に移行したのですが、当時は品質の維持や向上に苦労しました。ブランド力がない分、例えばシールの貼り方ひとつをとっても、まっすぐに貼っていなければ“やっぱりな”と思われてしまいます。そこで、工員たちの教育などにも力を入れ、品質にこだわってきました」(坂田さん)
地道な努力を続けたことで、昨年の扇風機の売上げ台数は同社史上最高の350万台を記録した。
「当社の扇風機は、約100種類というラインナップの多さやカラーバリエーションの豊富さも特徴です。扇風機は基本的な構造は一緒なので、部品の総量を多く確保したり、外箱のサイズを同じにすることでコストを削減し、お手ごろ価格で提供できるようにしています」(坂田さん)
※女性セブン2013年9月5日号