映画やドラマなど、コミックやアニメを原作とする実写化作品は数多い。その中でもとりわけ注目が集まるのは、バリエーションがあったり、繰り返し見る機会のあるCMではないだろうか。「サザエさん」「ドラえもん」といった“誰もが知っている”キャラクターの実写化では、キャスティングだけでも大きな話題となる。
こうした傾向は日本国内だけではないようで、今年5月にYouTubeで公開されたブラジルのプジョー「208」の「チキチキマシン猛レース」実写化CMは、再現性やクオリティの高さが評判となり、またスペインではチョコレートクリーム「Nocilla」の「ドラえもん」実写CMで、白い猫が青いシャツに鈴をつけた赤い首輪姿で登場。ネット上では“これは実写ではなく、単なるコスプレでは?”といったツッコミが入りつつも、そのかわいらしさが人気となった。
最新の実写化CMとしては、やはり“誰もが知っている”キャラクターでありながら、これまで実写化されていなかった藤子・F・不二雄作品のひとつ「パーマン」が、リクルートカードのCMとなって、8月22日からオンエアされている。このように多くの実写化CMが作られる背景について、広告代理店の関係者はこう分析する。
「テレビの視聴率が下がり、メディアも多様化した今、本当の意味で『国民的』なコンテンツは減っています。一方で、『サザエさん』や『ドラえもん』『パーマン』といった昭和アニメは、誰にでも知られているため、モチーフにしやすい。当時テレビで見ていた層が大人になり、消費の中心になっていますしね。
中でも藤子不二雄作品は、キャラクターデザインや色使いがポップなものが多くて記号的。現代的と言ってもいいくらいです。そのため、秒数の短いCMでも強いインパクトを残せるので、起用されているのではないでしょうか」
このCMで登場するパーマンとパー子、原作通りマスク・マント・バッジを身にまとい、正体は隠されているが、実は今“旬”な子役が演じている。パー子役はパナソニック「エコナビ」やケンタッキーフライドチキンなどCMを中心に活躍する、安藤美優ちゃん。パーマン役は、映画「そして父になる」や大人気ドラマ「半沢直樹」でそれぞれ主人公の息子役を演じる二宮慶多くん。CMではマスク姿だけだが、YouTubeではかわいらしい2人のコメント動画が掲載されている。
「貯める気ないのに、貯まっちゃう」のキャッチコピーで、カードのポイント還元率をアピールするこのCM。ドラマ「半沢直樹」では父親役の名セリフ「倍返し」が話題だが、息子・半沢隆博役の慶多くんは2人や5人のパーマンに分身して登場。いわば父に倣って「倍返し」「5倍返し」だ――おもしろ半分に、あえてものごとを混同する記者は、CMを観ながらついニヤニヤしてしまうのだ。
そんな記者の妄想はさておき、今回の「パーマン」CMについて前出の代理店関係者は、「昨今の実写CMの流れに留まらない点に、好感が持てる」とも語る。
「アニメを実写化するCMは、グリコの『サザエさん』やトヨタの『ドラえもん』シリーズなど、『大人になった後』を描いたものが続きましたが、似た手法が続くと飽きられやすい。パーマンはCM初登場なのに加えて、子役を使って原作の世界観を再現しようとしたところも新鮮です。それに子役は、知名度のわりにギャラが高くないですしね」