日本国内で食品廃棄量は1900万トンにものぼり、「飽食の時代」であるが、戦中戦後、日本人は食品の確保に苦労した。NHK『きょうの料理』『あさイチ』で人気の“ばぁば”こと料理研究家・鈴木登紀子さん(89才)が、当時の食糧事情を語る。
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毎年、終戦記念日の時期がまいりますと、ふと、戦中戦後の食糧難を思いだします。誰もが食べることに必死、生きのびるのに精いっぱいだった時代、東京で新婚生活を始めたばかりだった私は、焼け野原を目の当たりにし、がく然といたしました。
そんななか、実家の母がこっそり送ってくれるお米やおいも、大根がどれだけありがたかったことか。大事に大事に、いただいたものです。なかでも、本や衣類でカモフラージュされたりんご箱を開け、そこにかぼちゃを見つけたときは小躍りするほどうれしゅうございました。
かぼちゃは栄養満点な上に日もち、腹もちともにたいそう優秀なお野菜ですから、重宝しました。あの甘みがすーっと心に染みていく感覚を、今も覚えております。
かぼちゃには表面のデコボコした日本かぼちゃと、ツルツルした西洋かぼちゃがあります。日本かぼちゃはメキシコが原産で、安土桃山時代にカンボジアから渡来したため「カボチャ」と名づけられたのだとか。
一方、一般にくりかぼちゃと呼ばれる西洋かぼちゃは南米のペルーあたりが原産で、強い甘みとほくほくした肉質が特徴。今では、すっかり西洋かぼちゃが主流ですわね。
※女性セブン2013年9月5日号