韓国では、戦時中に日本企業に強制労働させられたという韓国人らが、いまになって日本企業に損害賠償を求める強制徴用訴訟を起こしている。ソウル高裁が7月10日、新日鉄住金(旧新日本製鉄)に対し、訴えを起こした韓国人4人へ計4億ウォン(約3500万円)の賠償を命じた。同様に三菱重工業が韓国人5人に対し計4億ウォン(約3500万円)の支払いを釜山高裁から命じられており、機械メーカーの不二越も現在、韓国で訴訟中だ。
だが、これはまだ序章に過ぎない。実は韓国では、政府管轄の組織である「対日抗争期強制動員被害調査および国外強制動員犠牲者等支援委員会」が、強制徴用を行なった日本企業のうち現存する企業を「戦犯企業」としてリストアップしている。昨年8月に発表された企業数は、実に計299社にも達した。
本誌が入手した名簿によると、三菱、三井、住友といった財閥系企業に加え、日産やマツダ、カネボウ、キリンビール、味の素、パナソニック、森永製菓など、歴史ある老舗企業が名を連ねる。そこには当然、先の新日鉄や三菱重工の名前もある。つまり、このリストに名前の挙がった企業は今後、同じような強制徴用訴訟に巻き込まれる可能性が高いのである。
韓国の戦争被害実態調査では、強制徴用されたとする該当者は22万人にも上るという。仮に全員に新日鉄住金と同様に1人あたり1億ウォンの賠償を命じる判決が出たとすると、約2000億円もの賠償金を、日本企業が負担しなければならなくなる。このまま泣き寝入りしては、日本経済全体にも大打撃を与える事態となりかねない。
いや、影響は経済界どころか、政界にも波及する。安倍政権の対応はもちろんのこと、この名簿には麻生太郎・副総理の家業である麻生セメントも挙がっているからだ。もし麻生セメントが訴訟を起こされたら、いまは各企業に対応を丸投げしている政府も本気になるのだろうか……。
※週刊ポスト2013年9月6日号