日本はお金持ちに厳しすぎる悪平等社会か、否か。富裕層に対する課税強化の動きが強まる中、エイベックス・グループ・ホールディングス社長の松浦勝人氏がフェイスブックで<富裕層は日本にいなくなっても仕方ない>などと発言し、波紋を広げている。
ネットで大勢を占めたのは、<沢山の税金を払っているから敬えという下衆な心が見え透いている>など、批判的な論調だった。だが、所得が高くなればなるほど高い税率を課す累進課税制度に嫌気がさし、国外脱出を図る富裕層が増えているのも事実だ。
日本の外資系金融会社をリタイアし、現在は投資アドバイザーとして日本とニュージーランドを行き来するT氏(49歳)も“日本の悪平等社会”に悲観した。
「稼いだ金の半分以上を所得税や住民税で巻き上げ、それだけの税金を支払ったうえで蓄財した資産を相続税で取り上げるのが日本。それって努力する人間、頑張った人間をあまりにバカにしていませんか。国境の垣根が低くなった今日、日本を脱出する私のような人間はますます多くなる」
ニュージーランドは相続税、贈与税がかからない。T氏は現在、都内に2か所と軽井沢に1か所の計3か所に不動産を所有する。が、これもじきに売却し海外の資産管理会社に移すそうだ。
エイベックスの松浦氏も<僕は自分の事はこの国に頼らずに自分でやっていこうと思う>とフェイスブックで語っていた。こうした考えに同調する日本の経営者は多い。現在は国内に基盤を持ってビジネスをする経営者も、機を見て海外に進出したい、と口々にいう。
ジュエリー業や不動産投資を営み、年収5億円を超えるという50代女性経営者のW氏はこう語った。
「松浦さんの言葉って、私のような中小企業の経営者からするととても頷ける話なんですよ。所得税や相続税だけではなく法人税も同じく日本は不平等。
私の周りでは本社機能を海外に移す人が出てきています。でも実務は日本で行なう。会社を海外に移して、いったんは海外で仕事をうけて、それから日本に発注する。
日本国民として、日本に税金を納めなければならないという意識はありますが、経営者の視点からすればまずは自分の会社を守らなければなりませんから」
海外に法人を移して日本に発注するという“裏技”を駆使してまで節税に励むのも、「もとを正せば国が悪い」と息巻くのだ。
※週刊ポスト2013年9月6日号