国民健康保険は市町村単位で運営され、保険料の計算方式も市町村ごとに違う。高齢者の割合や未納率が高く、保険財政が厳しい自治体は保険料が高くなる。隣り合う自治体の住民が同じ病院で同じ治療を受け、窓口で払う金額が同じでも、保険料を加えた医療費負担額は居住地によって大きく違う。
この問題は早くから指摘されてきたが、これまで放置されてきたのは、国保には国保団体連合会や国民健康保険中央会という天下り組織がぶら下がっているからだ。厚労省は天下り先を守るために今も保険制度の抜本改革に反対している。
安倍晋三政権は今回ようやく、2017年までに国保の運営主体を都道府県に移管させる方針を打ち出した。だが、「これで都道府県内の保険料格差がなくなる」と思うのは早計だ。政府内では、同じ都道府県内でも「保険料未納が多い地域は料率を高くする」ことが検討されているからだ。
未納分の保険料を、ちゃんと支払っている住民の負担を増やすことで賄おうというのである。国保保険料の未納は徴収する役人の怠慢なのに、これなら役人は「他の住民に払わせればいい」と徴収をサボれる。
未納者も「金持ちが払ってくれるから払わなくてもいい」となって共助の社会保障システムが壊れていく。保険料の地域格差は後期高齢者医療制度や中小企業が加盟する協会けんぽも同様で、裏には役人の怠慢で保険料の地域差別が広がる仕組みがあるのだ。
※週刊ポスト2013年9月6日号