同期入社で、ほとんど互角のライバル同士だったのに、気がつけば実力も肩書きも大差がついている―サラリーマンの世界ではよく目にする光景だが、特にスポーツの世界では、明暗が「成績」という形でハッキリと表われる。
例えば「ハンカチ王子」こと日本ハムの斎藤佑樹(25)と「マー君」こと楽天の田中将大(24)。高校3年時の夏の甲子園の決勝戦では、引き分け再試合を戦い抜き、最後は斎藤が田中を三振に仕留めて優勝。ライバル対決は斎藤に軍配が上がった。
しかし、それから7年。早稲田大のエースを経て北海道日本ハムに入団した斎藤は故障もあって二軍でくすぶり、東北楽天の田中は22連勝の日本記録を打ち立てるなど“最強エース”の名をほしいままにしている。
ゴルフでは、石川遼(21)と松山英樹(21)のライバル関係が注目を浴びている。石川は2007年、高校1年だった15歳の時にプロツアー初優勝を飾り、史上最年少優勝を更新。翌2008年に16歳でプロに転向するや、2009年には史上最年少で賞金王に輝いた。一時は石川の長き黄金時代が到来するとまでいわれたが、ここに来て戦績は低迷が続いている。
かたやアマチュア時代に石川に水をあけられていた松山は、今年4月にプロデビューし、2戦目で初優勝を飾った。その後も、全米オープン10位、全英オープン6位と、いずれも日本人最高順位を記録。ランキングでも一気に石川を引き離している。
この結果を「持って生まれた才能」や「日々の努力」の差と片付けてしまうのは簡単だ。しかし、現実にはそれだけでは説明できない“何か”があるのではないか。
環境か、精神力か、それとも運なのか……。社会に出てからの「伸びしろ」を最も大きく左右するのはどんな要素なのか。
『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社刊)の著者でビジネスコンサルタントの俣野成敏氏は、差がつくひとつの理由として「当たり前のレベル」の違いを挙げる。
「誰もが“自分はやるべきことをやっている”“一生懸命やっている”と思っている。しかし、“当たり前”と思ってやっていることのレベルは各人違うのです。その小さな積み重ねの差が、5年後、10年後には圧倒的な差になっていく」
わかりやすい例として俣野氏が紹介するのは、カリスマ美容師と並の美容師の違いだ。
「ある人気美容師に有望な人材の特徴を尋ねると、彼は『シャンプーで指名を取れる人』と答えました。誰がやってもあまり差がつきそうにない地味な仕事に思えますが、将来、カリスマになる人は、気持ちのいいシャンプーのやり方を徹底的に研究するし、その時の客との会話をメモしておいて、次に来店した時には『あの映画、面白かったですか?』と話しかける。それが当たり前だと思っているのです」
美容院に就職しても、実際にハサミを持たせてもらえるまでには時間がかかる。その時間をどう過ごすか。「シャンプーをするために美容師になったわけじゃない」と思いながらシャンプーする者と、「いまのうちに気持ちのいい接客を身につけよう」と考える者。その違いが10年後の指名客数の差になるというわけだ。
※週刊ポスト2013年9月6日号