国内

ネットの悪ふざけ ルール違反ぎりぎりをみせる“芸”の模倣

 ツイッターを中心に、若者たちが“悪ふざけ”をする画像を公開し、炎上する騒動が相次いでいるが、このようなケースは今回が初めてではない。6年前の2007年11月には、吉野家のアルバイト従業員が、メニューにはない超大盛りの創作豚丼「テラ豚丼」を作る過程を動画サイトにアップし、炎上した。

 また、同月、ケンタッキーフライドチキンの高校生アルバイト従業員が、「店内でゴキブリを揚げた」とミクシィに書いた。後に「嘘を書き込んだ」と釈明したものの、通っていた学校を自主退学するはめになった。

 しかし、今回のように写真付きの投稿が相次いで連鎖するのは初めてのケースだ。その背景には、今や日常的に使われるようになったツイッターやフェイスブックをはじめとしたSNS(ソーシャルネットワークサービス)がある。携帯電話さえあれば、友人との食事の様子、出先で見つけた面白いものを写真付きですぐさま大勢に伝えられるシステムだ。

 それにしても、なぜ、バイト先の冷凍庫に入り込むなどといった悪ふざけの写真まで、ツイッターやフェイスブックに投稿しようと思ってしまうのだろうか。劣化する一方の、日本人の理性が顕著に表れているとはいえまいか。臨床心理士の矢幡洋さんが言う。

「まず、自分は特別な存在だということをみんなに見せつけたいという心理がある。そして、面白いネタを他の人に提供したいという心理もあるのでしょう。今の人たちは、お笑いのボケとツッコミという考えがしみついています。ネタを提供して、第三者に突っ込んでほしいんです」

 ツイッターには、フォロワー数、フェイスブックには「いいね!」の件数がある。ネット編集者の中川淳一郎さんは、この“数字”こそが悪ふざけ投稿を助長させていると指摘する。

「今の人気のステータスは、SNSで友達の数や“いいね”の数、RT数がいかに多いか、ということです。だから、みんな、どれだけ面白いことをして、どれだけコメントをもらえるかに腐心しているんです」

 確かに悪ふざけをした人たちはたくさんのコメントをもらい、ツッコミを受けた。実はそれは、こうした悪ふざけの写真投稿が今の日本の文化風土に合っている証左だというのは、思想家の内田樹さんだ。

「“ルール違反ぎりぎりのこと”をしてみせることが、一種の“芸”としてメディアで注目されていること、それが現象の背後にある事情だと思います。人気のある政治家たち、石原慎太郎、橋下徹、麻生太郎らは、公人なら普通決して口にしないような暴言をあえて吐いて、それでもペナルティーを受けないというアクロバットで人気を集めてきました。これ以上やったら罰せられるぎりぎりまでリスクを冒す“芸”が国民的に受けている。若者たちはそれを模倣しているんです」

 内田さんが挙げた彼らでさえも、たとえば橋下氏は「従軍慰安婦」発言のように、ぎりぎりを踏み外し、世間から猛バッシングを浴びることもある。

※女性セブン2013年9月12日号

関連記事

トピックス

氷川きよしが紅白に出場するのは24回目(産経新聞社)
「胸中の先生と常に一緒なのです」氷川きよしが初めて告白した“幼少期のいじめ体験”と“池田大作氏一周忌への思い”
女性セブン
公益通報されていた世耕弘成・前党参院幹事長(時事通信フォト)
【スクープ】世耕弘成氏、自らが理事長を務める近畿大学で公益通報されていた 教職員組合が「大学を自身の政治活動に利用、私物化している」と告発
週刊ポスト
阪神西宮駅前の演説もすさまじい人だかりだった(11月4日)
「立花さんのYouTubeでテレビのウソがわかった」「メディアは一切信用しない」兵庫県知事選、斎藤元彦氏の応援団に“1か月密着取材” 見えてきた勝利の背景
週刊ポスト
多くのドラマや映画で活躍する俳優の菅田将暉
菅田将暉の七光りやコネではない!「けんと」「新樹」弟2人が快進撃を見せる必然
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
「週刊ポスト」本日発売! 小沢一郎が吠えた「最後の政権交代を実現する」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 小沢一郎が吠えた「最後の政権交代を実現する」ほか
NEWSポストセブン