4年ぶりに歌舞伎座に帰ってきた夏の風物詩『八月納涼歌舞伎』。最後の演目『棒しばり』では、坂東三津五郎(57才)と中村勘九郎(31才)が息ピッタリの踊りを披露した。この演目は、かつて三津五郎と勘九郎の父・中村勘三郎さん(享年57)が名コンビとして評判だった作品だけに、客席は盛り上がり、ハンカチで涙をぬぐう姿も目立った。
この八月納涼歌舞伎が閉幕してから、わずか2日後の8月26日、三津五郎は自身のホームページで、こう報告した。
<この五十年病気・怪我での入院もなく休まず舞台に打ちこめたのは丈夫な体のお陰だと思っておりました。
ところが例年の健康診断を七月に受けましたところ、膵臓に腫瘍が見つかりました。早期発見出来たことは膵臓の病気としては大変幸運なことだそうです。
この病気の更なる検査、完治に向けての治療のためしばらく三津五郎にお時間を頂戴したく存じます>
突如、病気のため入院することを告白し、9月1日からスタートする『九月大歌舞伎』を降板することを発表した。西崎クリニック・西崎統院長は、こう説明する。
「医師が<膵臓に腫瘍>と聞いて、まず思い浮かべるのは“がん”の可能性です。ただ、あの発表の内容だけでは、具体的にどういう状態かはわかりかねます。しかし、膵臓は胃の裏に隠れており、小さな内臓ですから、腫瘍が発見しづらく、見つかったときには進行していたというケースも少なくないんです。また膵臓は部位や進行度により手術が難しく、手術ができない場合もあり、その場合は薬で散らすしかできません」
それほど命が危ぶまれる可能性が高い病気が7月の時点で見つかったのにもかかわらず、三津五郎が休むことなく『八月納涼歌舞伎』の舞台に立ち続けたのは、亡き親友・勘三郎さんとの“約束”があったからだ。
若い頃、なかなかチャンスをもらえなかった三津五郎と勘三郎さんは、毎日のように会っては、夢を語り合っていたという。そんなときに一緒に始めたのが『八月納涼歌舞伎』だった。勘三郎さんの葬儀で、三津五郎はこう弔辞を読んだ。
「ぼくたちの世代で歌舞伎座を開けたいという思いを叶えたのが納涼歌舞伎。その第1回の千秋楽で客席を見上げると3階までいっぱいのお客様。思わず目頭が熱くなり、手を取り合って喜んだことを今でも覚えています」
※女性セブン2013年9月12日号