予算は足りず、給食費未納も増える一方、それでも栄養価に厳しい規制のある学校給食は、次々と奇抜な献立を編み出している。
神奈川県A市では「きなこ揚げパン、豚汁、ナムル、牛乳」、千葉県C市では「五目あんかけ焼きそば、アメリカンドッグ、キウイ、牛乳」、北海道F市では「クロコッペパン、みそにこみラーメン、ケチャップだれにくだんご」……。
これらは『変な給食』『もっと変な給食』(ブックマン社刊)で教育行政に警鐘を鳴らした栄養士の幕内秀夫氏が収集した、全国小学校の今年の「給食献立表」にあったメニューだ。
義務教育の小中学校で出される学校給食は「学校給食法」に基づき、そこには、給食は「子供の健康のために実施されなければならない」と記されている。しかし、残念ながら同法の精神が遵守されているとは言いがたい。
「私の元には全国の父母や学校関係者から学校給食献立表が送られてきます。素晴らしい給食を実施してレベルを上げる自治体がある一方で、首を傾げたくなるようなメニューを出している自治体も少なくありません。一生懸命やっている自治体とそうでない自治体の差が拡大し、給食の質の二分極化という憂うべき状況が進行しているのです」(幕内氏)
幕内氏は学校給食の傾向について、さらにこう続ける。
「最近では毎日のようにハンバーガー、ピザ、ホットドッグ、ラーメン、菓子パンなどが出ます。他方、ご飯に味噌汁のついた献立はほとんどありません。給食のファストフード化、ファミレス化の流れが加速しているのです。
また、食事の基本は『一汁二菜』、つまり主食に主菜、副菜、そして汁ものとされてきました。学校給食において、これを必ず守れとは言いませんが、主食と副食の区別はあってしかるべきです。
ところが最近の給食ではパンと麺類がセットになり、主食が二つという異常なパターンが定着してしまいました」(幕内氏)
食文化の崩壊は学校給食の現場から始まっているのかもしれない。
※SAPIO2013年9月号