芸能

快進撃中、堺雅人の主演ドラマが次クールの大本命と評論家

 ドラマ好きは脚本家で見るドラマを選ぶ傾向がある。今なら『あまちゃん』の宮藤官九郎氏や、『Mother』の坂元裕二氏の名を挙げる人も多いだろう。そんな中、賞を軒並み受賞し、各方面から引っ張りだこの脚本家が、映画『ALWAYS 三丁目の夕日』やドラマ『相棒』『リーガル・ハイ』など話題作を連発している古沢良太氏(40才)だ。“今最も多忙な脚本家”といわれる古沢氏の魅力について芸能・ドラマ評論家の木村隆志さんが解説する。

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 古沢さんが業界で引っ張りだこの理由は、とにかく面白い。これに尽きます。この脚本家ならこういうテイストの作品を書く、とわかるような“スタイル”がなく、書くドラマはすべて、これまでにない斬新なものばかりで、新しいタイプの書き手と言えますね。扱うネタは、時事性がありながら新しい切り口で見せる。自分でしっかり取材する力もある。面白さを追求するエンタメ志向と、今のトレンドでもある“嘘っぽさ”や“説教くささ”を排除した本質志向も徹底しているので、性別年齢を問わずどんな人でも楽しめます。

 高く評価されたドラマで、テロに立ち向かう秘密警察を描いた『外事警察』(NHK)があります。普通の人は職業の存在すら知らなかったテロ専用の警察を扱うことがまずすごいし、原作をはるかに上回る作品に仕上げてしまいました。これだけ刑事ドラマが溢れている中で、「こんなの見たことない」というものをやってのける。書きおろしというと書き上げるまでに1年かかってしまう人もいるなか、常に複数の作品を並行して手がけるという筆の速さも素晴らしいです。

 特に、古沢さんが優れているのは、どの業界の話でもどんなテーマでも、全部自分のものにしてしまうことです。アプローチの仕方は、まずテーマがあって、その舞台となる業界に入り込み、深く掘り下げていく。書く際には、その舞台となる世界に自分が演者のようになって完全に入り込みます。彼は脚本を書くとき、自分でセリフを言いながら立って書くことでも知られていますが、それも世界に入り込める理由かもしれません。

 例えば、法曹界を舞台にした連続ドラマ『リーガル・ハイ』(フジテレビ系)は、視聴率は低かったものの、業界はもちろん視聴者からの評価が高く、スペシャルドラマ化され、秋には続編の放送も決まりました。堺雅人さん演じる主人公の弁護士は、ものすごく性格が悪いが言うことは全部正論で、どこか抜けている、という役。作り上げたキャラクターのバランスがよくとれていますし、全く見たことがない主人公だけに引き込まれます。今、『半沢直樹』で大人気の堺さんですが、このドラマで破天荒な弁護士役で新境地を開き、「東京ドラマアウォード2012」で主演男優賞に選ばれるなど、評価されました。10月からスタートする『リーガル・ハイ』パート2は、次のクールの大本命とみています。

 古沢さんは、性悪説や性善説のどちら側でも描きません。勧善懲悪の『半沢直樹』のように悪役を設定すると、わかりやすいし視聴者を引きこみやすい。ただ、ステレオタイプな悪役を設定するということは、悪役を通じて正しさを訴えるというような、ある意味“説教くささ”も出てしまう。一方、悪役を全く登場させず全員“本当はいい人”で物語を平和に描く作品もありますが、古沢さんは“良くも悪くもない”という描き方で、視聴者に判断をまかせる。そんな含みを残した書き方も、面白さの理由のひとつだと思います。

 映画でも、古き良き日本を舞台に人情ドラマを描いた『ALWAYS三丁目の夕日』、元アイドルの死をめぐりファンが推理を展開するハートフルな密室劇『キサラギ』、探偵が犯罪に巻き込まれるハードボイルドものの『探偵はBARにいる』と、全て作風が違います。個人的にも最も好きな脚本家です。ちなみに2番目が坂元裕二さん。クドカン(宮藤官九郎)さんも好きなのですが、クドカンさんの場合はエンタメ性に長けているものの、ときどきテーマを深堀りしない作品があり、物足りなさを感じることもあります。

 古沢さんの作品は、どっぷり感情移入させてくれるという意味での“エンタメ”性もダントツです。本人は表に出たがらないですが、もっと脚光を浴びてしかるべき人だと思いますし、『あまちゃん』『半沢直樹』で生まれたドラマブームを次に担うのは、この人ではないでしょうか。

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