日本時間の9月8日早朝に開かれるIOCが総会で、2020年の五輪開催地が決定する。最終候補地として東京、マドリード、イスタンブールの3都市が残った今回の投票はとりわけ“票読み”が難しいという。五輪招致活動に詳しいスポーツジャーナリストの玉木正之氏がいう。
「招致活動の中心は、自分の都市や国の利点をアピールすること。だから招致委はIOC委員全員の顔写真に経歴や趣味、家族構成などの詳細な情報を記したリストを作成し、委員が共感したり、喜んだりするポイントをアピールする。“治安”“環境”“財政”“開催地のバランス”など、各委員の判断のプライオリティはある程度決まっているので、票読みが大きく外れることはなかった」
しかし、今回は状況が様変わりしているという。
「各都市とも“マイナス面の払拭”が最大のテーマ。イスタンブールは政情不安、マドリードは財政危機と7月の列車事故(※注)。そして東京は原発事故の収束と地震対策です。したがって、プロフィールからは読み取れない“委員たちの不安感”を探らなくてはならない。特にチェルノブイリを連想させる福島原発事故に対する欧州の委員たちの不安は大きいのではないか」(同前)
それでも、複数の招致委、政府関係者の話を総合すると、3都市で争う第1回投票の“票読み”は、概ね次のような見通しとなっている。
・東京…東南アジア、オセアニアを中心とした約3割前後
・マドリード…欧州と南米を中心とした約4割強
・イスタンブール…北アフリカや中東などイスラム圏を中心に約2割強
中には、「東京が1位、マドリードが2位」と予測する関係者もいたが、共通するのは「最初の投票で過半数獲得都市は現われない。1位と2位、すなわち東京とマドリードの決選投票になだれ込む」という分析だ。招致活動に関わる政権幹部が語る。
「昨年の自民党総裁選の再現です(笑い)。イスタンブールとの2位・3位連合をつくり、決選投票でマドリードを破る。政府としてもその根回しをしている」
東京招致委関係者も同じ意見だ。
「問題は1回目ではない。決選投票に進めなかった3位都市の票の取り込み。前回、東京は赤っ恥をかいたが、同じ失敗は繰り返さない。4年越しのリベンジ、いや“倍返し”です」
【※注】2013年7月24日にスペイン北西部で起きた高速列車脱線事故。79人が死亡、130人以上が負傷。運転士によるスピードオーバーが大きな要因と見られており、安全対策の不備が指摘された
※週刊ポスト2013年9月13日号