9月7日(日本時間8日早朝)、日本の真裏にあたるアルゼンチンの首都・ブエノスアイレスで開催されるIOC総会。最終プレゼンを終えた安倍晋三・首相、猪瀬直樹・東京都知事らが固唾を呑んで見守る中、コールされるのは「TOKYO」か、それとも──。
最終候補には東京、マドリード(スペイン)、イスタンブール(トルコ)の3都市が残っているが、東京の最大のライバルと目されているのはマドリードだ。東京招致委の関係者が語る。
「“イスラム圏初の五輪”を掲げて最有力だったイスタンブールは、反政府デモなどの政情不安を抱え、隣国・シリアの内戦は国際紛争に発展しかねない。IOC委員の間には“開催は無理”という現実的な判断が広がっている。ところが、そのイスタンブール票は東京ではなくマドリードに流れている。7月にスイスで行なわれた開催計画説明会でも、マドリードへの拍手が一番大きかった」
勢いに乗るマドリード招致委は、総会2週前の8月24日にスタッフの第一陣をブエノスアイレスに送り込んだ。9月2日には招致活動のシンボルで、7月の説明会でもスピーチで喝采を浴びたフェリペ皇太子が現地入りし、続々と集うIOCが委員たちに投票の呼びかけを行なう。
「スペイン語圏での総会開催は地の利がある。皇太子は1992年のバルセロナ五輪のセーリング(ヨット)代表選手で、選手団の旗手も務めた。誰の目にもスポーツマンとわかる2メートル近い体躯と精悍な顔立ちは実にフォトジェニックだ。
2012年の開催を勝ち取ったイギリス(ロンドン)は、総会の際にエリザベス女王のVTRスピーチと、世界的な人気サッカー選手のD・ベッカムのスピーチで委員の心を掴んだ。王室とアスリートのブランドを兼ね備える皇太子のスピーチは実に心強い」
マドリード招致委の関係者は自身満々にそう語る。スペインのメディアでも〈CNI(スペインの情報機関)はマドリードの勝利を確信〉(経済紙エコノミスタ)など、“マドリード当確”の報道が相次いでいる。さらに、とてつもない“隠し球”が囁かれている。
「スペインリーグのFCバルセロナに所属するアルゼンチン人選手のリオネル・メッシがサプライズ登場するといわれています。バロンドールを4年連続で獲得するサッカー界の英雄が母国で“スペインに一票を”といえば、勝利の決定打になる」(スペイン紙記者)
一方、東京招致委に楽観ムードはない。8月23日に都庁で行なわれた出陣式では森喜朗・元首相(招致委評議会議長)が、
「選挙は最後の風が大事。(投票箱の)鍵を開けるまでわからない。握手は両手じゃないと頭は下がらん。私は14回も選挙に負けなかった。これが選挙の要点なのである!」
と、檄を飛ばす一幕も。“日本流”の選挙運動が気位の高いIOC委員に通じるかどうかはさておき、「選挙のプロとしての叱咤は、マドリード優勢が伝えられる中での東京の悲愴感を感じた」(都庁職員)という。
※週刊ポスト2013年9月13日号