中国共産党機関紙「人民日報」は「新興都市建設の偽りの火を消さなければならない」と題する記事を発表し、「全国で200以上ものゴーストタウンが存在する」と暴露、李克強首相が唱える都市化構想を批判した。党機関紙が李首相の政策に反対する記事を掲載するのは極めて異例。党内で都市化構想に強い抵抗があるとみられ、権力闘争の火種になる可能性がある。
中国では不動産ブームが終わりに近づきバブル崩壊を懸念する声が高まっているが、李首相は「農村部の都市化」の号令を発し、その結果、次々と振興都市が開発されるなか、多くのマンションが建ち並んだが、その大半は不動産の値上がりを待つ投機用資産とみられ、住民がほとんどおらずゴーストタウン化している。
ゴーストタウンに関する統計資料はほとんど発表されていないが、人民日報は中国の経済改革や経済政策を立案・実行する国家体制改革委員会の最新報告を報道。
この報告書は部外秘だが、それによると、中国の12省・自治区のなかで、144の地方政府が200以上の新興都市を建設。一つの地方都市が平均で1.5の新たな都市を建設している計算だ。その大半がゴーストタウン化しており、夜になっても暗いままの新しいマンションがほとんどだという。
中国でゴーストタウンとして有名なのは内モンゴル自治区のオルドス市だ。新たな100万都市計画を掲げて、2007年に鳴り物入りで建設が進められ、2010年には完成したが、日中でも人影はまばらで、夜になると、キツネや狸、熊が出ると言われるほどゴーストタウン化が進んでいる。
米経済紙「ウォールストリートジャーナル」は遼寧省鉄嶺市に建設された衛星都市のルポを掲載。2009年に完成した衛星都市はオルドスの新興都市同様、人がいない。
同紙は衛星都市の開発地区にひかれてやってきた床張り事業会社オーナーにインタビュー。このオーナーは「人はどこだ。ここには誰もいない。すぐにも倒産しそうだ。仕事を求めて北京に移るかどうか従業員と話し合っている」との生々しいコメントを引き出している。
さらに、李首相が今年3月の全国人民代表大会(全人代)終了後、首相として初めて臨んだ会見で、「都市化は多大な消費や投資需要を促すだけでなく、雇用の機会を創出し、国民の幸せに直接影響する」と述べた言葉を引用し、政府は20年で2億5000万人が農村部から都市に移住する見通しだと伝えた。
しかし、「実際は中国の中小都市287の地方政府のうち、約3分の2に当たる170以上の都市で、実際の住民数が登録されている人数より少なく、すでに大都市への人口流出が進んでいる」と同紙は指摘、李首相の都市化構想そのものに疑問を呈している。