物と物をくっつける技術は、ニッポンのものづくりを支える「縁の下の力持ち」といえる。創立90周年を迎えた日本を代表する接着剤メーカー『セメダイン株式会社』の協力のもと、接着力のパワーの秘密に迫った。
フォークリフトから吊りさがったナイロンロープと、モデルの女性が座るブランコを繋いでいるのは、接着された鉄製のプレート2枚だけだ。
「全然、平気です。思いっきり漕いでも大丈夫」。彼女のコメントに、セメダイン開発部の橋向秀治、佐伯友見の両課長も思わず頬が緩む。先に口を開いたのは橋向課長だ。
「彼女と衣装、靴をプラスした重量は48キロ、ブランコが2キロの合計50キロ。それを接着面75ミリ×53ミリのアイプレート2枚で支えるのは、接着剤の力を考えれば難しいミッションではありません」
佐伯課長も満足げに「計算値では7トンまでOK、これくらいは余裕でしょう」と話す。
両課長が信頼を寄せる今回用いた接着剤は、市販されている反応形アクリル系接着剤。“2液タイプ”といわれる、淡黄色のA剤と青色のB剤を混ぜて用いる製品だ。佐伯課長の説明によると、「このタイプは主に工業用なのですが、硬化時間が10分と早いうえ強靭な接着力を誇ります」とのこと。
使用量はA剤、B剤とも5ミリ×40ミリ、重量にして0.3グラムと驚くほど少量だ。それらをヘラで混ぜあわせプレートをくっつけ、何度か左右に回すことで均等に広げた。橋向課長が語る。
「塗るのは片方だけで十分です。接着剤を均等にならすことで0.1ミリの厚さになります。事前にプレート部の塗装を除去しておくと、接着をより強固にできます」
ちなみに0.1ミリとは髪の毛二本分ほどの厚みでしかない。
モデル■佐藤千聖 撮影■渡辺利博
※週刊ポスト2013年9月13日号