JR代々木駅から雑然とした商店街を抜けると、突如、そびえ立つ巨大なツインタワー。地上11階、地下2階、総工費85億円は、現政党の本部ビルの中で最大規模を誇る。
いまも破壊活動防止法の調査対象団体であり、かつては、反対勢力から「代々木」の通称で恐れられた日本共産党の中枢だが、その中に一歩足を踏み入れると、意外にもオープンだった。
実際、撮影を希望した場所はほとんどすべてで許可が下り、職員に質問してもみな懇切丁寧に説明してくれる。食堂の取材中には、一般の職員に交じってランチをとる市田忠義書記局長の姿もあった。
一方、頑固一徹の側面も本部内の随所でうかがえる。ビル内の案内板には、党建設委員会、国民運動委員会、国民の声室といった、いかにも共産党らしい名前の部署が並び、職員は労働者の党だけあって食堂から受付に至るまでみな正規職員。党の活動を紹介する映像も、外部流出を防ぐために自前の編集室で職員が編集作業を行なっている。
ほかにも政党助成金は一切受け取らず、国政選挙では他党との選挙協力はなく、毎回、全選挙区に独自候補の擁立を目指している。それを資金面で支える機関紙『赤旗』も、本部ビル隣に編集部と印刷所を置き、すべて自前。旧ソ連共産党が消滅し、中国共産党が資本主義に傾倒する中で、党名もいまだ「共産党」だ。
ドン・キホーテのような姿勢を微動だにしない政党だが、先の選挙、ブレまくりの既成政党の中で確かに目立つ存在であったことは間違いない。
撮影■太田真三
※週刊ポスト2013年9月13日号