婚活、妊活に続き、“卵活”なる言葉が現われた。いつか子供を産む日のために「卵子の冷凍保存」を行なう──独身女性たちが色めき立っているという。そもそもこの卵子凍結とはどのような技術なのか。
個人差はあるものの、一般に卵子の老化は女性が30歳を超えた頃から始まり、30代半ばから急速に進むとされている。そこで、老化が進む前、できれば20代の間に質のいい卵子を採取しておき、冷凍保存しようというものだ。
採取した卵子は液体窒素でマイナス196℃に凍結して保管する。ここまで温度を下げると理論的には数十年でも卵子は劣化しないとされている。保管した卵子は子供を産む条件が整ったときに解凍して受精させ、女性の体内に戻して妊娠・出産に至らせる。
国立成育医療研究センター・母性医療診療部の斉藤英和医長がいう。
「今までも受精卵を凍結する技術はありましたが、この10年ほどの技術進歩で、未受精の卵子も凍結保存できるようになった」
とはいえ、このまま放置しておくと、無秩序に普及してしまうため、生殖医学会は卵子凍結のガイドラインを作成することとなった。
ガイドライン案では、がん治療以外のケースでも卵子の凍結保存を容認し、「凍結・保存の対象者は、成人した女性で、卵子(卵巣組織)採取時の年齢は40歳以下が望ましい」「凍結保存した卵子(卵巣組織)の使用は45歳以上では推奨しない」と規定している。この規定について、前出の斉藤医長はこういう。
「卵子凍結をやっているクリニックのなかには、40歳過ぎた方に対しても実施しているケースがあるようですが、さすがにそれは意味がないのでこういった指針を出したと考えられます」
40歳を過ぎるぐらいになると、卵子はすでに老化している。保存してもほとんど意味がなく、解凍後の体外受精の成功率も著しく下がる。
斉藤医長によれば、凍結卵子ではなく、通常の体外受精卵の場合でも、妊娠・出産に至る成功率は、20代で2割程度。42歳だと5%、45歳だと1%以下になるという。
「若い頃に凍結保存した質のいい卵子であれば、これより成功率が上がる可能性はあります。ただし、卵子は若いまま保存できても、母体の老化は止められない。相手の男性の精子も当然、歳とともに老化していきます」(同前)
万能の技術のように過信するのは禁物なのである。
※週刊ポスト2013年9月13日号