いま巷では、「医師・病院にかからないほうがいい」とうたう“医療否定本”というジャンルがブームになっている。女性医療ジャーナリストの増田美加さんはこのブームについてこう分析する。
「“医師にかからないほうがいい”というのは極端ですが、昔のように、診てもらった医師にやみくもに治療を任せる時代は終わりました。ただし、いたずらに医師を疑っていては良い治療は受けられません。いかに“信頼できる先生”を選ぶかが重要になっています。そのためにはまず、患者の側が病院や医師について知る必要があります」
そこで多くの人が持っている、病院・医師に関する疑問について、医師や増田さんに答えてもらった。
まず病院で、うんざりしてしまうのが混雑。いつも混んでいて、時間が読めない。いったいいつになったら…とイライラも募りがちだが。NPO法人「21世紀の医療・医学を考える会」の医師・岡本裕さんは、こう説明する。
「だいたいいちばん混むのは診察開始時間の直後。お年寄りが一気に並ぶからです。逆に受付終了時間の直前に行けば、多少空いているはずです」
増田さんは「病院に電話して時間がない旨を伝え、空いている時間を聞いてみると案外教えてくれますよ」と話す。最近では家にいながらネットで予約し、自分の受付番号が近づいてきたら病院に行くという便利なサービスも。一度、病院のホームページを確認してみよう。
また、医者選びの時、「どうせならテレビに出演していて、ニコニコ愛想も良さそうな名医に診てもらいたい」と思う人も多いかもしれない。
「もちろんできます。方法としては、可能なら担当医に紹介状を書いてもらうのがいちばんの近道。そのほかにも、自分が治療してほしい名医がいる病院に直接予約を入れ、『●●先生にどうしても診てもらいたい』と伝えれば、叶う場合もあります」(増田さん)
ただし、「テレビに出ている医師が名医とは限らない」というのが、専門家たちの一致した見解。
「せっかく名医のところに行っても、『忙しすぎて全然診てくれなかった』『その人の部下に診てもらった』という相談をよく耳にするので、その先生を訪ねていけば心配ないというわけではありません」(岡本さん)
名医といわれている医師であっても、「良い医師」かどうか見分ける必要がありそうだ。
さらに、いざ治療が始まり、医師の指示通りに薬をのんでいても、なかなか症状が良くならないということもある。
「病気の種類にもよりますが、だいたい投薬から1か月ぐらいで改善があってもいいはず」(岡本さん)
1か月を目安に症状に変化がないようなら、今まで投与された薬の情報が書かれたお薬手帳を持って、病院を変えてみるのがいいかも。
そして、お世話になる医師に、感謝の気持ちとしていくらか包む“心づけ”。渡さないと治療を後回しにされそうだけど…。
「それはひと昔前の話。今はむしろしないほうがいいです。そもそも、患者さんが多すぎて誰がくれたかなんて覚えてませんから(笑い)。それに、菓子折程度のほうが受け取りやすいし、話のきっかけにもなると思いますよ」(岡本さん)
増田さんは別の“心づけ”を提案する。
「感謝の気持ちを手紙で記すだけで充分ではないでしょうか。手紙をくださった患者さんのことは、よく覚えているといいます」
最近は慣習としている病院は少なくなっていて禁止している病院も増えているという。
※女性セブン2013年9月19日号