「アメリカから安い食材が入ってくる」
TPP(環太平洋経済連携協定)推進派は消費者のメリットをそう強調する。しかし、大量に押し寄せるアメリカ産食材の危険性はあまり認識されていない。厚労省の輸入食品監視統計(2011年度)によると、アメリカからの輸入品の食品衛生法違反事例は174件。中国に次ぐ数だ。
今年6月分の違反事例では、「アフラトキシン」の検出事例が目立つ(29件中22件)。アフラトキシンとは強い発がん性を持つカビ毒。2008年の汚染米転売事件で問題となった物質だ。そのカビ毒がアメリカ産のトウモロコシやピスタチオナッツ、アーモンドなどから日常的に検出されている。
水際で発見できたからよいという話ではない。輸入食品の行政検査率はわずか2.8%。民間登録検査機関を合わせても11.1%に過ぎない。食政策センター・ビジョン21主宰の安田節子氏は「TPPによって事態はより深刻になりかねない」と指摘する。
「貧弱な検査体制のまま食料輸入が増えれば、検査率はどんどん下がります。また、長距離輸送でこうしたカビの発生を防ぐために作物の収穫後に使用されるポストハーベスト(PH)農薬の問題も出てくる。OPP(オルトフェニルフェノール)などの殺菌剤、防カビ剤にも発がん性が指摘されているのです」
日本では収穫後の作物に農薬を使用することは禁止されている。しかし、実態としてはPH農薬が使われたアメリカ産のオレンジやレモンが今でも流通している。
「国は『食品保存のための食品添加物である』という理屈で輸入果物にPH農薬の使用を事実上認めてきたのです」(安田氏)
※SAPIO2013年9月号