竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は「亡くなった友人に貸したお金を彼の息子に請求してもよいか」という質問が寄せられた
【質問】
友人が会社の窮地だから救ってほしいと100万円の借金の申し込みをしてきました。担保として絵を差し出されたのですが、その友人が事故で死亡。絵も偽物で3000円ぐらいの価値しかないことがわかりました。こういう場合、友人の40歳になる息子さんに返済を求めてもよいものでしょうか。
【回答】
友人の会社の窮状に融通したというお金を借りたのは誰かが問題です。会社が借りたのであれば、友人が保証人になっていない限り、息子さんに請求できません。なぜなら、息子さんに対する請求ができる根拠は、友人が生前負っていた債務を、負の遺産として相続していることにあるので、会社の債務だけであれば、息子さんは相続しないからです。
友人が借主や会社の保証人であった場合、相続人である息子さんに請求できます。ただし、その範囲は、相続の態様で決まります。相続人が息子さん一人だけなら、すべての財産をマイナスの財産も含めて相続するので、100万円全額を請求できます。
兄弟など他の相続人がいると、法定相続の割合でしか相続しません。そこで厳密には、友人が14、15歳のころからの戸籍を調査して、相続人の有無を調査し、各自の相続分を確定する必要があります。
しかし、これはなかなか大変です。息子さんが、友人の借金を返すという意向を持っているときには、他の相続人の相続分まで支払ってもらうためには、その分を重畳(ちょうじょう)的に引き受ける契約書を作っておくことをお勧めします。
もっと重要な問題があります。息子さんが本当に相続するかということです。友人に財産があれば、借金を相続するのもやむを得ませんが、借金の方が多いのであれば、相続は息子さんにとって迷惑です。そのような場合、相続が開始したことを知ってから、3か月以内に家庭裁判所に申し出て相続放棄できます。息子さんが相続放棄すると請求できません。
ただ3か月待って相続放棄がなければ請求できるかというと、相続開始時に相続人に相続財産が全くないと信じたような場合には、相続債務があったことがわかってから、相続放棄できるので完全ではありません。
※週刊ポスト2013年9月20・27日号