テレビ業界の勢力地図ががらりと変わりつつある。ドラマやバラエティのヒットでテレビ朝日が平均視聴率でトップに躍り出る一方、8月の視聴率ではフジテレビはTBSに抜かれ4位に転落、長年民放のトップランナーを自任していたが今や見る影もない。
民放各局悲喜こもごもの一方で、実は一人勝ちの様相を見せているのがNHKだ。とくに自社コンテンツをネット上で配信する『NHKオンデマンド』が絶好調。「平成25年度第1四半期業務報告」によれば『あまちゃん』がヒットしたことなどにより、視聴料収入は前年同期比130%の3.9億円になった。
さらに話題になったドキュメンタリー『世界初撮影! 深海の超巨大イカ』では、他局には真似のできない圧倒的な制作費と技術力を見せつけた。
視聴率だけでなく、NHKは有能な人材をも惹きつけている。ある制作プロダクションの幹部がいう。
「NHKスペシャルの制作を受注する場合は1本にかける取材は半年、予算は人件費を除いて2000万円ほど。民放の夕方のニュースでは、15分ほどの特集1本を人件費込みで150万円で作らねばならないのですから、資金力は圧倒的です。有能なフリーディレクターはどんどんNHKに移っている」
この傾向は新卒採用でも同様だ。ある民放局の人事採用者が打ち明ける。
「最近では、目を付けた学生に、“第一志望はNHK”と眼中にない態度を取られることが多い。硬派な番組を作りたいディレクター志望者だけでなく、女子アナ志望者だってそうです。今でも杉浦友紀アナ(30)や鈴木奈穂子アナ(31)ら、民放キー局にはいないような才色兼備の若手アナが揃っていますが、この傾向はさらに強まるかもしれません」
※週刊ポスト2013年9月20・27日号