作家・曽野綾子さん(81才)が、『週刊現代』8月31日号に寄稿した「私の違和感」が話題となっている。そこにはこう綴られていた。
〈女性は赤ちゃんが生まれたら、いったん退職してもらう。そして、何年か子育てをし、子どもが大きくなったら、また再就職できる道を確保すればいいんです。(中略)それにしても、会社に迷惑をかけてまで、なぜ女性は会社を辞めたがらないのでしょうか〉
この曽野さんの提言に対する賛否は、仕事や子育てにどれだけ重点を置くかによっても大きく変わってくるようだ。病児保育に関する認定NPO法人フローレンス代表理事の駒崎弘樹さんは、曽野さんの提言に「違和感を覚えた」と言う。
「女性が出産して会社を辞め、再就職しようと思っても、技術の進化や市場環境の変化が格段に速くなっているので、なかなか追いつけないこともあります。そういうケースで再就職すればいい、というのは現実的ではありません」
さらに駒崎さんは、一度会社を辞めるリスクについて、こう指摘する。
「一度会社を辞めて戻るとしたら、非正規雇用でしか戻れないのが実態。でも、出産を機に非正規雇用になってしまうのと、育児休暇を取って会社に戻るのとでは、生涯賃金は1億円以上違うんです」
一方、働く主婦を応援するビー・スタイルしゅふ活研究室長の川上敬太郎さんは、「言葉の表現が強いので誤解を招くこともあるかもしれませんが、書かれている内容は的を射てると思います」と話し、その理由をこう説明する。
「曽野さんは働きたくて努力していても選択肢が限られている人たちではなく、現状にすごく甘えてしまっている人に向けて言っているのだと思います。同じ働く主婦でも、仕事でしっかりと成果を出し、社会人として地に足をつけて頑張っている人もいれば、できるだけ気楽に働いて手当ても最大限もらいたいと思う人もいる。このかたたちは同じ主婦でも相容れないわけで、“女性だから”とひとくくりにはできません」(川上さん)
しゅふ活研究室が行ったアンケート調査によれば、結婚前と結婚後、出産後で、女性の働き方の希望は変わっていく。結婚前は「フルタイムで働きたい」という人が多いが、出産後は「パートタイム」を希望する人が増えるという。それは、子供の世話などに忙殺されるため、勤務時間や時間帯、勤務地など、それぞれの事情に合った働き方を望むからだ。
「私は出産を機に会社を辞め、子育てに専念しましたが、それでよかったと思っています。PTAではバリバリ仕事をしているママたちは私たちをバカにした感じで嫌でしたが、私は子供を産んで育てるのも、その人にしかできないとても大事な仕事だと思うので、パートで充分です」(40代・パート)
曽野さんの提言も、産休を取る人に向け、単に退職を促すだけでなく、復職を希望する際に受け入れ体制の強化を求めている。こういった女性たちにとっては、そのほうがより希望に沿ったものといえるかもしれない。
※女性セブン2013年9月19日号