8月下旬に中国山東省済南市で行なわれた元中国共産党政治局員の薄熙来・元重慶市党委書記の裁判は5日間も続いたほか、すでに刑が確定している妻の谷開来や王立軍・元重慶市副市長らがビデオや直接出廷して証言するなど異例ずくめだった。そのなかでも世界中のメディアを驚かせたのは、出入りの業者への薄熙来ファミリーの“たかりの構図”だった。中国問題に詳しいジャーナリスト、相馬勝氏が解説する。
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薄ファミリーがせしめた最も高額な賄賂はフランスの高級リゾート地で名高いニースの別荘。大連市の富豪、大連実得集団の徐明会長がビジネスへの便宜供与を目的に薄熙来が遼寧省長だった2001年に贈ったものだ。
その広さは国際試合で使われるサッカー場の半分の約4000平方メート。そのなかに延べ床面積が350平方メートルの3階建ての別荘のほか、庭や駐車場、プールなどを備えている。当時の価格で約232万ユーロだった。日本円換算で約3億円だ。
これ以外にも、フランスやイギリス、ルクセンブルグに住宅や事務所を所有。海外4銀行に預金口座を持ち、数十億ドルもの隠し財産を形成していた。これらの秘密口座の開設にはすべて徐会長が関わっていたとされる。
さらに、驚くことに、谷開来や薄熙来の息子、薄瓜瓜の海外旅行などの費用として、徐会長が約443万元(約7000万円)もの代金を用立てていたことだ。このなかにはロンドンやパリ、ベルリンなど欧州諸国やアルゼンチン、キューバなど南米訪問も含まれている。さらに、大のサッカー好きだった瓜瓜の希望で、ベルリンで行なわれた2006年のサッカー・ワールドカップ観戦の費用も徐会長が出している。
また、谷開来、瓜瓜親子は2011年、学校の教師やクラスメートら40人以上を引き連れてアフリカ旅行をしているが、その航空運賃8万ドル(約800万円)やホテル宿泊費用の約5万ドル(約500万円)の計13万ドルも徐明会長にツケを回している。
法廷では、谷開来親子が徐明会長に航空運賃や滞在費など出させた海外渡航の回数は計76回にも及んでいることが明らかにされた。これについて、薄熙来は「76回だろうが、760回だろうが、私とはまったく何の関係もない。私が知らないところで、妻子が勝手にやったことだ。私は妻や息子から航空運賃などの問題について聞いたことは1回もない」と開き直っている。
しかし、薄熙来は徐明会長から著名な中国人女優、チャン・ツィイーさんやテレビキャスターら20人以上の女性を紹介され、男女の関係をもったとされる。その際、チャンさんには1回で1000元(約1億6000万円)を支払ったとされ、それらの費用はすべて徐会長もちだったと伝えられる。
薄熙来の買春疑惑については、あまりにも破廉恥すぎたためか、今回の裁判では罪状として取り上げられなかったが、いずれにしても、薄熙来ファミリーの徐明会長へのたかりぶりはあまりにも常軌を逸していると言わざるを得ない。