いま家族関係のなかで「毒母」というテーマが話題となっている。「毒母」とは、ネグレクト(育児放棄)や心理的・身体的虐待などが恒常化するような家庭における母親のことで、子どもにとって“毒(=害悪)となる母”という意味。過剰な抑圧や、過度の無関心、暴言など、子どものトラウマの原因になることもあるという。
最近では、女優の遠野なぎ子が、幼少期に母から受けた虐待などの体験を綴った自伝的小説『一度も愛してくれなかった母へ、一度も愛せなかった男たちへ』で波乱の半生を明かし、衝撃を与えた。こうした告白本や、同テーマの小説などの登場で、毒母への注目度が高まっている。
そうした中で、自ら「毒母に育てられた」という都内高級住宅街に住む女性Aさん(54歳)は、次のように告白する。
「私の母親は、典型的な毒母です。合理的に考えがちな私へ、常に感情論でぶつかってきます。いま母は70歳半ばですが、依然として過干渉で、すべて自分の言うとおりにさせようとする。
子どものころから好きな服を着せてもらったことはありませんし、抑圧されてきました。この歳になって反抗すると、『いじめられた、私は悲劇のヒロインだ』というような泣きべそをかいて非難してくる始末です」
Aさんによると、「近所の奥さん方とランチをするときも、同じような母親の悪口ばかりが飛び交っています」というが、実際、別の女性Bさん(52歳)も、ママ友会で“毒母話”が盛り上がることが増えたことを感じているという。
「子どもたちの受験があるうちは、ママ友のランチ会でも子どもの話ばかりでした。子どもが就職したり、大学受験が終わってからは、なぜか皆さん、ご自分の母親の愚痴を話すようになりましたね。
よく聞いてみると、幼少期からよく耐えてきたな、と思う話がとても多いです。最近聞いたのは、町内会のコミュニティと仲良くなりすぎた結果、会員のおばあさま方と一緒に娘とその知人をいじめるというケースです。70代と50代の母子の話とは思えず、とても驚きました」(Bさん)
子どもが独立した後のママ友たちの間で、毒母話に花が咲くのは、そんなに珍しいことではないようだ。