芸能

「AKB48最大のライバルは今や『あまちゃん』」と中森明夫氏

 社会現象ともなったNHKの朝ドラ『あまちゃん』は、8月末に平均視聴率23.9%と番組記録を更新し、大ヒットとなった。なぜかくも多くの国民が夢中になったのか。『あまちゃん』とは日本人にとって何だったのか? アイドル評論家の中森明夫氏が語る。

 * * *
『あまちゃん』はNHK朝ドラ史上初のアイドルドラマだ。4月1日の初回から毎朝、生視聴してツイッターで批評している(まとめサイトは40万人超が読んでくれた!)。

 主人公のアキの前で親友のユイ(橋本愛)が「アイドルになりたい!」と叫んだ序盤の回に〈このドラマはアイドルの世界を変革する! これを批評しないで、私がアイドル評論家である意味がない〉とツイートした。〈中森明夫さん、スゴイ〉とリプライがあった。達増拓也岩手県知事だった!

 母の故郷である東北の海辺の街へ、東京から連れて行かれた娘アキは、祖母の指導のもと海女になることをめざす。ローカル人情ドラマとして始まった『あまちゃん』は、途中で様相を一変する。アキは親友のユイと共に地元アイドルとして脚光を浴び、GMT47なるアイドルグループの一員になるため上京する。アイドルドラマへと劇的に変貌するのだ。

 アイドルになれなかった母・春子を『なんてったってアイドル』の小泉今日子が演じているのが面白い。その小泉と薬師丸ひろ子の1980年代の2大アイドルが初共演した。『あまちゃん』には80年代アイドル映像がふんだんに流れる。中年世代にとっては、懐かしくてたまらない。

 主演の能年玲奈は今や国民的アイドル女優となった。80年代アイドルの回顧や、現在の地元アイドルの活況、AKB48に代表されるグループアイドルのブーム等、『あまちゃん』はアイドルというジャンルの古今の富を存分に取り込んでいる。

 そればかりではない。小泉今日子が役名の天野春子として、劇中の80年代ヒット曲『潮騒のメモリー』をCD発売、現実にヒットした。GMTやアメ横女学園らドラマ内の架空アイドルグループも次々と楽曲を発表、それらを収録したCDアルバムはオリコンチャート1位に輝いた。朝ドラ史上初の快挙だ。

 今年の紅白歌合戦は、“あまちゃん”勢に占拠されるとも言われている。アイドルが出演して、アイドルをテーマにした、だけではない。このドラマから次々と新たなアイドルが誕生している。AKB48の最大のライバルは、今や『あまちゃん』なのだ!

 3.11東日本大震災をテレビドラマで初めて描くという最大のクライマックスは既に終えた。『あまちゃん』のメッセージは明確だ。戦後日本最大の国難に対峙するのは、アイドルなのだ! この歴史的ドラマの最後を私は見届けたい。

『あまちゃん』が終わったら、どうしよう? 大丈夫。このドラマにもらったパワーによって、アイドルの世界はもっともっと盛り上がる。そう、希望は、アイドル! 希望は、能年玲奈だ!!

 バブル入社組がデフレ状況を突破する『半沢直樹』、80年代アイドルブームの活気が甦る『あまちゃん』――現代の両ヒット作品には共通項がある。強烈なキャラクターのドラマによって日本を元気にすることだ。アマノミクス×半沢イズムが好景気を呼び込む。じぇじぇ……の倍返しだ!!

【なかもり・あきお】1960年三重県生まれ。1980年代から編集者・コラムニストとして活躍、「オタク」「アイドル」の命名者。

※週刊ポスト2013年9月20・27日号

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン