『岸辺のアルバム』『ふぞろいの林檎たち』『藏』『長崎ぶらぶら節』『天国までの百マイル』などの作品をプロデューサーや演出家として手掛け、TBSのドラマ黄金期を築いた立役者として知られるのが、元TBSの“大重鎮”大山勝美氏である。
その大山氏は、視聴率30%超えも達成し、クライマックスへ向け最後の山場に突入したTBS日曜劇場『半沢直樹』を大絶賛する。
後輩の演出家・福澤克雄氏を指して、「彼がここまで力をつけたかと思うと感慨深い」などと、登場人物の表現にこだわる作り手側の成長ぶりに目を細めるが、ひとつだけ気にかかる点があるという。
それは、オネエキャラの金融庁統括官・黒崎を好演している片岡愛之助についてだという。
「演者はああいうアクの強いキャラクターをやると、目立ちたくてやりすぎてしまうんです。ちょっと芝居に走りすぎですね」
かといって、作り手がブレーキをかけてしまうと演者のパワーを削いでしまうことにもなりかねず、難しい判断が迫られるという。
「僕も『マイホーム’70』(1970)というドラマをやったとき、八千草薫さんの夫役だった坂本九さんが同じように演技をエスカレートさせたことがある。そのときは直接指摘せずに、現場のモニターで繰り返し演技を見せて、本人にわかってもらいました」
最後に、長らくドラマの不振が続いた古巣、TBSの『半沢』の成功を、大山氏はこんなふうに分析した。
「無理に時代に合わせようとしたり、他局の真似をしようとしたドラマはことごとく失敗しました。『半沢直樹』は、作り手がやりたいものを、編成になんといわれても作るという決意を感じる作品。そういう熱意は視聴者にも通じるんです」
※週刊ポスト2013年9月20・27日号