野球選手に必要な筋肉は、野球の練習で身につくから筋力トレーニングは必要ない。いや、やはり筋トレをとりいれて体を強くし、パフォーマンスを向上させるべきだ。この論争は、長らく決着のつかないホコタテ(矛盾)論争の様相をみせている。連続イニング・連続試合フルイニング出場数の世界記録保持者である元阪神の金本知憲氏に、筋トレの必要性についてきいてみた。
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カープに入団した1、2年目は完全なパワー不足で、プロの投手の球威に負けて打ち返せなかった。そのため肉体改造が必要だと感じて、トレーニングジムでメニューを作ってもらいました。そしてシーズン中もオフもトレーニングは欠かさなかった。そうしないとプロの世界では生きていけないと悟ったからです。その「恐怖心」からトレーニングを続けていきました。
目的は上半身と下半身のバランスが良くなり、かつパワーが発揮できて、40歳になっても動ける体作り。体脂肪をできるだけ最小にキープし、筋肉だけで体重を増やすことを目指しました。その結果、体脂肪が変わらないまま10キロ体重が増加。33歳の時の体重が一番重かったが、一番速く走ることができた。
学生時代にも筋トレをしましたが、我流だったので上半身だけ。プロになってからは上半身だけでなく、スクワットで下半身を重点的に鍛えました。
野球の筋肉はグラウンドで、という考えも間違いではないと思います。もちろんダッシュやランニングもやりました。それでつく速筋や遅筋(※註釈)をバランスよく、野球で使える筋肉にするために筋トレをする。これによって選手生命も延びたと確信しています。
僕は明らかに筋力不足だったので筋トレを始めましたが、筋力を鍛えて硬くなるということはないし、全身を使う野球に不要な筋肉はないと思っています。高校生のレベルが上がったのも筋トレの影響ではないでしょうか。
シーズン中にも筋トレを続けていたのは、筋肉だけで太っていたので、体重を落としたくない目的で筋力を鍛えていくしかなかった。21年間続けたトレーニングはきつかったですが、それが続けられたのは、一言でいえば向上心。それに尽きますね。
(※註釈)筋肉を構成する筋繊維の種類で、収縮速度が速いものを速筋、遅いものを遅筋と呼ぶ。速筋は瞬発力を引き出す、無酸素運動の時に使われる筋肉で、遅筋は持久力を引き出し、有酸素運動の時に使われる筋肉を指す。
※週刊ポスト2013年9月20・27日号