中国の政界では上海閥(江沢民・元主席ら)や太子党(高級幹部子弟)勢力、共青団(中国共産主義青年団)閥などの派閥が影響力を持っているが、最近になって、陝西省(古代中国の長安一帯を含む地域)出身や同省で長年勤務するなど同省に関係する最高幹部を中核とする「陝西閥」が政治的発言力を強めている。
陝西閥の総元締めは同省の戸籍をもち、青年時代の7年間同省に下放されていた習近平主席だ。習近平指導部が誕生して11月で1年が経つが、陝西閥は習氏の重要な支持基盤となりそうだ。
陝西閥には、党最高指導部の7人の党政治局常務委員のなかでは、習氏に加え、同省出身の兪正声・中国人民政治協商会議(政協)主席と、習氏同様、同省に下放されていた王岐山・党中央規律検査委員会書記の3人。
兪氏は2007年、上海市党委書記だった習氏の後任で、上海で一緒に仕事をしており、気心の知れ合った中だ。また、王氏は習主席が最も力を入れている腐敗撲滅の陣頭指揮をとる規律検査委書記で、2人の関係は極めて良いとされる。
政治局員では趙楽際・党組織部長、栗戦書・党中央弁公庁主任、馬凱・副首相、李建国・全国人民代表大会(全人代)副委員長の4人がいる。このほか、全人代副委員長としては張宝文氏が挙げられる。
党組織部長は党の人事権を掌握し、党中央弁公庁主任は党の日常業務を担当する極めて重要なポジションで、両者とも習主席に極めて近いといえる。また、馬凱氏の前職は経済政策を立案・実行する国家体制改革委員会主任で、副首相としての担当も経済政策。改革・開放路線の一層の深化に取り組んでいる習指導部としては、政策的に最も重要な職務といえる。
李建国氏は前職が全人代の日常業務を取り仕切る全人代秘書長で、全人代の裏から表まですべてを知り尽くしており、副委員長として全人代業務を取り仕切っている。
さらに、中国人民解放軍の高級幹部としては張又侠・中央軍事委副主席、房峰輝・総参謀長がおり、いずれも習主席に近いといわれる。習主席は2人をテコに軍権掌握を図る。
これらの陝西閥について、『習近平の正体』(小学館刊)の著者で、ジャーナリストの相馬勝氏はこう指摘する。
「中国では新たな最高指導者が生まれると、その人物を中心に地縁、血縁などを核にした政治閥が形成され、新指導者を補佐していく。習氏は太子党の中心人物で、上海閥からも支持されているが、今後は陝西閥を核にして、支持基盤を固めていくとみられる」