堺雅人主演で大ヒット中のドラマ『半沢直樹』(TBS系)。堺演じる銀行マンが、組織内外の人間と真っ向勝負をしていくストーリーが話題を呼んでいる。このドラマの視聴率に関して面白いデータがある。関東と関西を比べると、関西のほうが高い傾向にあるのだ。すでに放送した8話中5話で関西の視聴率が上回っている。6話以降は3週連続30%を超えた。いったいなぜ関西で高い支持を集めるのか? 県民性研究の第一人者でナンバーワン戦略研究所所長・矢野新一さんに聞いた。
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『半沢直樹』には関西、とりわけ大阪で受ける要素がたくさんあります。
大阪は“民”の町です。彼らにとって大阪は、お偉いさんやお役所の人たちの町ではなく、自分たちの町であるという意識がとても強い。だから、組織においては、わが物顔で振る舞う“上から目線”の人が嫌いだし、それに従うイエスマンも大嫌いなんですよ。
半沢はイエスマンではなくて、必死になって理不尽な上司とかに抵抗しているでしょ。そういう部分が、大阪の人が“いいぞ!”と共感するところなのではないでしょうか。半沢が、銀行の偉い人や、エリート連中を次々と蹴落としていく展開に、大阪の人は東京の人以上に痛快に感じていると思います。
勧善懲悪的なわかりやすいストーリーというのも、大阪の人に受けるポイントでしょう。大阪のお笑いを例にとっても、吉本新喜劇に代表されるように、同じことを毎回繰り返す、ある意味マンネリ的な展開が好まれます。ドラマも同様です。半沢が一度やられても、悪い奴らをやっつけて最後には倍返しする。このお決まりの展開は、彼らにとってなじみやすく、ある意味では、期待通りのストーリーなのでしょう。
あとは、やっぱりお金に関する話がテーマになっていることも大きいと思います。大阪は古くから商人の町で、現在までその気質は引き継がれています。ドラマで描かれるように貸したお金を返してもらうというのは、大阪商人にとっては当然の考えであり、お金を返さない人というのは悪そのもの。だからこそ、お金の回収をさまざまな手法を使いながら実行していく半沢を応援するのは当然です。
もうひとつは、このドラマの前半(5話まで)が、大阪が舞台だったということも関西地区の人気を後押ししたといえます。今は東京編が放送されていますが、劇中に登場するリゾートホテルは伊勢島ですよね。これは原作と同様ですが、関西圏を意識した名前になっています。
NHKの朝ドラは基本的に東京制作と大阪制作が交互になっていますが、大阪制作のときは関西が舞台の話になっています。これは大阪を意識したものを作らないと大阪の視聴者が離れてしまうからです。『半沢直樹』もまず関西編を放送し関西の視聴者をとりこんだことが、東京編になっても関西地区の視聴率が下がってない一因ではないでしょうか。
【関東・関西 1話~8話の視聴率推移】
●関東地区/19.4%→21.8%→22.9%→27.6%→29.0%→29.0%→30.0%→32.9%
●関西地区/20.6%→19.9%→25.6%→27.5%→29.5%→32.8%→31.2%→32.7%