初のクライマックスシリーズ進出に向けて、横浜DeNAベイスターズが最後まで奮闘している。昨年まで5年連続最下位のチームを立て直した功労者は、なんといっても中畑清監督だろう。スポーツライターが語る。
「全員を横一線で見て、公平な起用法をしている。簡単なようで難しい。ベテランには余計な気を遣ってしまいがちだし、若手起用でも特定の選手に偏重してしまう監督もいる。だが、シーズン序盤に実績のあるラミレスをスタメンから外したことからもわかるように、中畑監督は“聖域”を作っていない。昨シーズンは、好調だった中村紀洋が采配批判したと見るや、すぐに二軍落ちさせたし、なかなかできることじゃないですよ」
中畑監督の就任で最も変わった選手といえば、キャプテンの石川雄洋かもしれない。今シーズン、1番・遊撃でスタートした石川は、序盤こそ好調だったものの、4月下旬から不振に陥り、5月は月間打率2割9厘でスタメンを外れるようになった。5月24日には、故障以外では5年ぶりに出場選手登録を抹消された。
当時、中畑監督は「不調だとふてくされてベンチにいる。そんな選手は許さないし、このままだとずっと使えない。主将(の肩書き)を取った方がいいかもしれない。最初は一生懸命、円陣を組んだりしていたけど、いつの間にかやらなくなった。今じゃあ輪の中にすら入ってこない」と、石川への怒りを露わにしていた。
この懲罰降格以降、石川の態度は明らかに変わった。攻守交代の際、真っ先にベンチを飛び出るシーンも目立つようになり、グラウンドでもベンチでもハツラツとプレーする印象が強まった。それまでの長髪を短髪に変えたり、お立ち台で「根性で打ちました!」と絶叫したりと、明らかに“中畑色”に染まってきた。
その染まり具合は、良い結果となって現れた。二軍落ちまでの石川は打率2割3分6厘、2本塁打、12打点という低調な数字だった。しかし、6月8日に一軍復帰して以降は、打率3割3分、3本塁打、26打点(9月7日現在)と絶好調。特に8月は、月間打率3割9分7厘という驚異的なペースでヒットを量産した。
「試合中、ベンチ内でふてくされているのを見抜くのは、中畑監督に眼力のある証拠。試合だけに集中してしまいがちなのに、ちゃんと目を配っている。そして、石川の好調が長続きしているのも、また同じ態度を取ったら、二軍降格が待っていると感じているからでしょう。
今年は戦力補強が上手く行ったから、終盤までクライマックスシリーズ進出争いをできているのは間違いない。そして、中畑監督の舵取りがDeNAを戦う集団に変えた。これも、紛れもない事実です」(同前)