まさに骨肉の争いというように、身内同士がもめてしまうのが相続。64才の真一さん(仮名)もまた、相続でもめている1人だ。4人きょうだいの中で親の世話を最もした長男・真一さん。ところが、母の遺言は「次女と次男に半分ずつ財産を相続させる」というものだったのだ──。
そうした事例を、自身のラジオ番組等で数多く見聞きしてきた生島ヒロシさんは「“争族”を避けるには、相続の正しい知識と早めの準備が大切です」と説く。生島さんが、真一さんのケースを詳しく解説する。
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自分の死後、愛する家族たちに遺産分割をめぐって争ってほしくない。そのため、生前に「どのように遺産を分けるか」を指示したものが遺言です。いわば、遺言は遺された家族へのラブレター。彼らに幸せに暮らしてもらうためのメッセージだと私は思っています。
ところが、ときにはその遺言が原因でトラブルが起きてしまうこともあります。
『夢相続』代表取締役で、公認不動産コンサルティングマスター相続対策専門士の曽根恵子の元に相談に訪れた真一さんは4人きょうだいの長男でした。妹が2人、弟が1人います。お父さんはすでに他界。お母さんは東京都心にビルを持ち、最上階にひとりで暮らし、他のフロアにはテナントを入れていました。現金や株などの資産もかなり持っていたそうです。
お母さんの死後、次女の佳子さん(仮名・54才)と次男の浩二さん(仮名・52才)が公正証書遺言を持ってきました。それを読んだ真一さんは目を疑いました。なんと「財産は佳子と浩二に半分ずつ相続させる」と書いてあるではありませんか! 真一さんと長女のことは、ひとことも触れられていません。
若い頃に両親の仕事を手伝い、ビルを建てたときには借金の連帯保証人にまでなった真一さんは、とうてい納得できませんでした。とはいえ、遺言が法的に有効なものである以上、今さらどうしようもありません。
「自筆証書遺言は簡単そうに見えますが、形式に不備があって無効になることが多いんです。その意味では、公正証書遺言のほうがいい。どちらにせよ、トラブルを避けるため、遺言の内容を事前に家族に知らせておいたほうがいいですね」(曽根さん)
このケースの場合、故人の息子である真一さんは遺留分を請求することができます。4人きょうだいなので、法定相続分は4分の1。その半分、8分の1をもらう権利はあるわけです。
「でも、きょうだいで争いたくない」と悩む真一さんに、曽根さんは話し合いを勧めました。
「すべての遺産をオープンにし、きょうだい全員で話し合う。相続人全員が納得すれば、遺言通りにしなくても構わないのです」(曽根さん)
遺言は絶対と思われがちですが、「相続人全員の合意」さえあれば無理に従う必要はありません。遺言の最大の目的は「相続人同士の争いを避けること」だからです。
※女性セブン2013年9月26日号