ビジネス

「エクストリーム出社と流行りの朝活は全然違う」と協会代表

エクストリーム出社で柏市場を訪れたあまやん(天谷)さん

 9月2日から6日にかけて全国一斉エクストリーム出社大会が開催された。家から会社への移動を利用して、観光、海水浴、登山などに取り組み、定刻までに出社することを「エクストリーム出社」と呼び、そういったスタイルの出社をする会社員を「出社ニスト」と呼ぶのだという。スキルアップに役立つと流行りの朝活とエクストリーム出社は違うのか? 日本エクストリーム出社協会代表のあまやん(@amayan)さんに聞いてみた。

 * * *
 どうしてエクストリーム出社と呼ぶのですか、朝活でいいじゃないですかと言われることがあります。でも、この二つは全然違います。

 たとえ同じことをしたとしても、朝活と呼んでしまうとしっかりしなくてはならない、勉強しなきゃと感じませんか? そういったプレッシャーを感じてしまっては、仕事をひとつ増やしただけになる。それに、あまのじゃくなところが僕にあるからなのかもしれませんが、朝活の雰囲気は堅苦しくて苦手です。個人的なことではありますが、以前、誘われた朝活でネットワークビジネスに誘われたことも影響しているかもしれません。

 会社や業種の枠を超えた社会人のつながり、ということなら異業種交流会と同じでしょう? とも言われます。実際、全国一斉エクストリーム出社大会の開催中に朝の5時から鍋を食べるイベントをしたときには、参加者どうしが名刺交換をする場面も見られました。だから、似たようなものと受け取られているのかもしれません。でも、エクストリーム出社はまったく雰囲気が違います。

 異業種交流会でも必ず名刺交換をしますが、名刺を交換することそのものが目的になりがちです。僕が出席した会が偶然、そういったものばかりだったのかもしれませんが、様子をうかがううちに誰か一人の成功経験談を聞いて終わっていませんか。後日、手もとに残った名刺をみてもどんな人だったかまったく思い出せません。「今度、食事に行きましょう」と言ったり言われたりしても、実現したことはありません。

 でも、エクストリーム出社が話題の中心ならば、やりましょうと話題になるとたいてい実行できるんです。名刺を見ると、どんなエクストリーム出社をした人なのか思い出せます。協会を始めた僕と椎名の場合もそうでしたが、ポンポンと具体的にいろいろ決まっていくんですよ。

 エクストリーム出社のヒントになったのは3年前に出社拒否症に陥りかけたころの経験でした。ふだんは優しいのですが仕事に厳しく、毎日、机をバンバン叩いて怒るような先輩に指導された時期がありました。鍛えようとしてくれていたのかもしれませんが、IT業界はおとなしい人が多いこともあって慣れなくて、すごく怖かった。

 今日も会社へ行ったらまた怒られると考えると、憂鬱になるんです。夜、眠れなくてうじうじ悩んでいたら朝になり、このまま寝たら遅刻する。遅刻するくらいならもう出勤してしまえと朝早くに家を出たんです。できれば会社に行きたくないと遠回りをして出勤することを繰り返していました。最初は中央特快で会社と逆向きの電車に乗って、どこまで遠くへいけるかのチキンレースでした。

 何回か繰り返すうちに、憂鬱な気分で電車に乗っていた時間を使って観光できることに気づきました。空港へ行って発着する飛行機を見ながら朝ご飯を食べて、旅気分になって東京モノレールに乗り通勤コースに戻ると、空港からそのまま会社へ行くような気分になります。自分のためにこっそりお土産を空港で買ったりもしました。そうやって会社に行くと、上司にすごく怒られても心の中でこっそり優越感を持てたんです。

 一年ほど経つと、僕が仕事に慣れたからか、厳しい先輩からもそれほど怒られないようになりました。その後、新卒で入って勤めていたその会社を辞めて、今の会社に入ります。

 あの当時の出社前の時間を使った観光は、誰にも打ち明けず、ひとりだけでやっていました。それをエクストリーム出社という名前で始めたのは1か月ほど前のことです。酒の席で椎名(※しーねなこ、@shiinaneko)に3年前の経験を初めて話したんです。そうしたら、ゲームにしようという話がトントンと進んで、9月には全国一斉エクストリーム出社大会を開催するほどの広がりになりました。

 いま働いている会社の人たちも出社ニストになることを面白がってくれて、一緒にエクストリーム出社をしました。築地市場で朝ご飯を食べてから、みんなで出社したんですよ。

 エクストリーム出社を繰り返していると、会社からみたら仕事に余力があるのではと疑われかねません。だから、会社員として働くことや常識は完璧に守るのが鉄則。エクストリーム出社をしているときにケガをしても、それは仕事じゃないから労災が下りないだろうということは重々承知の上です。絶対に仕事には影響を与えません。遅刻や午前半休はもっとも恥ずべきことです。

 このごろ、ネットでの盛り上がりをみた各メディアから取材依頼がたくさん来ますが、その対応も仕事時間以外にしています。就業時間内は仕事に集中し、昼休みなどを利用します。文化放送の番組に出演したときも、昼休みにダッシュで会社を抜け出し、終わったらダッシュで帰りました。

 エクストリーム出社なんてする余裕ないよという人もいます。でもそれは、時間がとれないことを外のせいにしているだけではないでしょうか。捕らわれの身だということを自嘲気味に「だって俺、社畜だし」という言い方をするのは残念ですね。同じことでも、能動的に動いてみれば違った見え方になると思いますよ。

 出社だって、発想次第でこれだけ楽しめると証明したい気持ちもあってエクストリーム出社を始めました。会社を辞めずに仕事が厳しくてもこなして、なおかつ楽しく仕事へ向かう人が出社ニストなんだと思います。

 エクストリーム出社を通して、最終的に朝早く起きるのが当たり前になるといいなと思っています。会社が6時に始まって2時くらいに仕事が終われば、明るいうちに自由になる時間が増えます。そうなったら、もっと時間の過ごし方を自分が決めて過ごせるようになると思いませんか?

 エクストリーム出社を通じて外で繋がった人と、将来は一緒に仕事をできるようになったらいいなと思っています。仕事のためにアポイントを取るという入り口以外に、仕事ではないところで知り合った人と、実はこういう仕事をうちの会社はやっていてと話していたら繋がっていく。いい意味で公私混同していきたいですね。

●あまやん 日本エクストリーム出社協会代表。本名・天谷窓大。1983年生まれ。テレビ番組の制作会社に勤務する会社員。社内のシステム構築などを担当している。学生時代から青春18きっぷを使った電車の旅が趣味。9月24日の誕生日は、サプライズでお祝いされたいと願っている。

関連記事

トピックス

タイ警察の取り調べを受ける日本人詐欺グループの男ら。2019年4月。この頃は日本への特殊詐欺海外拠点に関する報道は多かった(時事通信フォト)
海外の詐欺拠点で性的労働を強いられる日本人女性が多数存在か 詐欺グループの幹部逮捕で裏切りや報復などのトラブル続発し情報流出も
NEWSポストセブン
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
《虫のようなものがチャーシューの上を…動画投稿で物議》人気ラーメンチェーン店「来来亭」で異物混入疑惑が浮上【事実確認への同社回答】
NEWSポストセブン
6月9日付けで「研音」所属となった俳優・宮野真守(41)。突然の発表はファンにとっても青天の霹靂だった(時事通信フォトより)
《電撃退団の舞台裏》「2029年までスケジュールが埋まっていた」声優・宮野真守が「研音」へ“スピード移籍”した背景と、研音俳優・福士蒼汰との“ただならぬ関係”
NEWSポストセブン
小室夫妻に立ちはだかる壁(時事通信フォト)
《眞子さん第一子出産》年収4000万円の小室圭さんも“カツカツ”に? NYで待ち受ける“高額子育てコスト”「保育施設の年間平均料金は約680万円」
週刊ポスト
週刊ポストの名物企画でもあった「ONK座談会」2003年開催時のスリーショット(撮影/山崎力夫)
《追悼・長嶋茂雄さん》王貞治氏・金田正一氏との「ONK座談会」を再録 金田氏と対戦したプロデビュー戦を振り返る「本当は5打席5三振なんです」
週刊ポスト
打撃が絶好調すぎる大谷翔平(時事通信フォト)
大谷翔平“打撃が絶好調すぎ”で浮上する「二刀流どうするか問題」 投手復活による打撃への影響に懸念“二刀流&ホームラン王”達成には7月半ばまでの活躍が重要
週刊ポスト
懸命のリハビリを続けていた長嶋茂雄さん(撮影/太田真三)
長嶋茂雄さんが病に倒れるたびに関係が変わった「長嶋家」の長き闘い 喪主を務めた次女・三奈さんは献身的な看護を続けてきた
週刊ポスト
6月9日、ご成婚記念日を迎えた天皇陛下と雅子さま(JMPA)
【6月9日はご成婚記念日】天皇陛下と雅子さま「32年の変わらぬ愛」公務でもプライベートでも“隣同士”、おふたりの軌跡を振り返る
女性セブン
(インスタグラムより)
「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画…直後に入院した海外の20代女性インフルエンサー、莫大な収入と引き換えに不調を抱えながらも新たなチャレンジに意欲
NEWSポストセブン
中国・エリート医師の乱倫行為は世界中のメディアが驚愕した(HPより、右の写真は現在削除済み)
《“度を超えた不倫”で中国共産党除名》同棲、妊娠、中絶…超エリート医師の妻が暴露した乱倫行為「感情がコントロールできず、麻酔をかけた患者を40分放置」
NEWSポストセブン
清原和博氏は長嶋さんの逝去の翌日、都内のビル街にいた
《長嶋茂雄さん逝去》短パン・サンダル姿、ふくらはぎには…清原和博が翌日に見せた「寂しさを湛えた表情」 “肉体改造”などの批判を庇ったミスターからの「激励の言葉」
NEWSポストセブン
貴乃花は“令和の新横綱”大の里をどう見ているのか(撮影/五十嵐美弥)
「まだまだ伸びしろがある」…平成の大横綱・貴乃花が“令和の新横綱”大の里を語る 「簡単に引いてしまう欠点」への見解、綱を張ることの“怖さ”とどう向き合うか
週刊ポスト