2020年夏季オリンピックの東京開催も決まり、今後ますます増加が予想されるのが日本を訪れる外国人の数。すでに東京スカイツリーの開業や円安効果などにより、2013年の訪日外国人旅行者は政府が掲げる「年間1000万人超え」を達成しそうな勢いだ。
外国人客を受け入れるサービス合戦は、あらゆる業界で繰り広げられることになるが、五輪開催を最大の好機とみているのがホテル業界である。
早くも東京都内や近郊にあるシティホテルは、増え続ける外国人客を狙った改装や新築計画が目白押しとなっている。
例えば、「京王プラザホテル(新宿)」が高層の120室を改装して内装を和風にする予定だったり、「グランハイアット東京(港)」が全387室にゆったりと座れるイスを導入する改装に着手したり、とにかく外国人の満足度を高めて稼働率アップに繋げようと対応を急ぐ。
また、9月14日に8億4000万円かけた改装を終えて再開業した「ザ・プリンス さくらタワー東京(港)」は、米ホテル大手のマリオット・インターナショナルとFC契約を結び、世界中のマリオットホテルの顧客を呼び込む戦略に出た。サイズの大きなダブルベッドの客室を従来比6割増の134室にするなどして、2014年度に外国人宿泊客の割合を50%にまで高める方針だという。
さらに、マリオットほか海外ではブランド力の高い外資系ホテルの攻勢も凄まじい。
今年12月にはラフォーレ御殿山(森トラストが運営)のブランド転換で「東京マリオットホテル」が、2014年夏に完成予定の虎ノ門ヒルズ内には「アンダーズ東京」(米ハイアット・ホテルズ)が開業する。
まさに日系、外資系が入り乱れた“東京ホテル戦争”が勃発しようとしているのだ。
しかし、バカ高い宿泊料金を支払えば豪華な設備がついてくるのは当たり前。最近では小規模チェーンでも外国人観光客の需要に独自のコンセプトで応えるホテルが人気となっている。ホテルライフ評論家の瀧澤信秋氏が語る。
「ホテルはしばらくの間、超高級なラグジュアリーホテルと宿泊に特化したバジェットホテルの二極化が進んできましたが、ここ数年、その中間ともいうべき料金は抑えつつ客室や付帯施設などを充実させた“コンセプトホテル”が多く出現して好評を博しています。
ラグジュアリーホテルのように隙のない完璧なサービスではないものの、外国人客が喜ぶサービスは何かを事細かく取り入れています」
コンセプトホテルの一例として瀧澤氏が挙げたのは、京成電鉄・上野駅から近く、不忍池を一望できる「ホテルココ・グラン上野不忍」だ。
「畳を配した『ZENツイン』ルームや、客室に露天・岩盤浴室を備えたスイートルームは、都内のラグジュアリーホテルにもない設備を有しつつ、利用しやすい料金設定プランもあり外国人に人気です。また、外国語対応スタッフがバス・飛行機の予約から浴衣の着付けまで行ってくれます」(瀧澤氏)
同ホテルは周辺の緑豊かな環境から自転車レンタルのサービスも行っているが、これも都心部のデラックスホテルでは真似できないサービスであろう。
「オリンピックでの来日を機会に観光も兼ねる外国人が多いと推測すれば、都内では上野や浅草、秋葉原などは注目すべき人気スポットになるでしょう。
そもそもスカイツリーの開業を見越して、上野地域では宿泊特化型のエコノミークラスからミドルクラスホテルの開業ラッシュとなっています。オリンピック招致成功により、さらにこうしたホテルの需要は増えると思います」(瀧澤氏)
もはやシティホテルやビジネスホテルの境目がなくなったいま。最後の勝負は、やはり従業員のきめ細かなサービス、それこそ“おもてなしの心”ということになろうか。