中国の環境汚染の進行具合は深刻という他ない。中国の情勢に詳しいジャーナリスト・富坂聰氏が指摘する。
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子供たちのからだで汚染度を計測するなどもってのほかだ!
衝撃的な見出しで論陣を張ったのは『新京報』9月9日の社説である。扱った題材は大気の汚染だ。きっかけは温州楽清市の小学校で大勢の児童が一度に体調不良を訴えたことだった。
北京の夕刊紙の記者が語る。
「場所は同市の北白象鎮第9小学校。新学期が始まって3日という短い期間に生徒19人が『鼻血が止まらない』と訴え、さらに100人以上が嘔吐、胸のむかつき、悪心を訴えたというのです。間もなく通報を受けた現地の環境保護部門が調査を行ったところ、同校近くの空気中で酸化クロムとベンゼンの値が基準をはるかに超えていたことが分かったのです。
学校はすぐに休校とし、犯人探しが始めました。半径1キロ以内の31の工場を対象に調査を行い、うち問題のある3つの工場を電器と水の供給を止めるという強硬手段で生産停止の追い込み、ほどなく学校も通常に戻ったのですが、それでもまだ本当の原因にまでは行き当たっていないのです。学校は塗装を行ったばかりでベンゼンの値も高かったと言われます。また同じころ、滄州市の小学校で大量の生徒が咳と涙が止まらないという症状を訴える事件も起き、その原因が大量のホルムアルデヒドだったことも伝えられていますからね」
環境ホルモンか大気汚染か――。いずれが原因にせよ、この問題が報じられると大きな反響が国内で起きた。冒頭紹介した社説もその一つだ。
中国では、大気汚染が深刻な北部の人間の方が南部よりも寿命が5年短いといった噂も流れたほど。人々の環境は悪化の一途をたどっている。6月末に発表された『2012中国健康報告』(中国医師協会、中国医院協会、北京市健康保障協会の合同調査)によれば、調査対象となった都市住民68万7000人のうち、77%の人が呼吸器系に何らかの異常をかかえていたという。
この事態を受けて北京市は、2017年までにPM2.5の値を2012年時点から25%下げるという目標を掲げて発表、第6環状線のなかにある企業を次々に追い出す計画を立てたが、それが根本的解決になるのか、それとも北京オリンピックのときのような別の場所に移すだけになるのか、いまのところ市民は半信半疑なのだという。