ビジネス

シャープ増資の裏で苦渋の決断 業績上方修正も再生は道半ば

 復活の足掛かりとなるのか――。2期連続で合計9000億円を超える赤字を計上し、経営危機に瀕していたシャープが9月18日に大型増資を発表した。

 その内容はLIXILグループ、マキタ、デンソーの3社に対する計173億円の第三者割当増資と、最大1489億円にのぼる公募増資を行うというもの。これでシャープは1662億円の資金を手に入れることになる。

 資金増強はシャープにとって喫緊の課題だった。金融ジャーナリストの森岡英樹氏が解説する。

「9月末に2000億円の社債償還を控えていたので、その前になんとか資金繰りのメドを立てないと債務超過に陥る危険もありました。ちょうど白物家電や太陽電池などの需要も大きくなり、円安効果もプラスに働くなどツキが回ってきた時期だったので、増資を実施するには絶好のタイミング。これで当面の難局は凌げそうです」

 確かにシャープの業績は回復基調にある。今回、増資計画とともに発表された2013年4~9月期の業績予想では、営業利益が従来予想の150億円から上方修正し、300億円の黒字になる見込みだという。

 だが、来年の3月と9月には、また計1300億円の社債償還期限が襲ってくる。資金の工面はもとより、なによりも肝心の本業再建はまだ緒についたばかりとの指摘もある。経済誌『月刊BOSS』編集長の関慎夫氏が語る。

「シャープが業績回復の理由に挙げている堅調な事業とは、<健康・環境、ビジネスソリューションをはじめ、スマートフォンやタブレット端末向けカメラモジュールを中心とした電子デバイス>です。つまり、シャープは最終製品をつくる電機メーカーから、部品メーカーとして生き残る道を選んだのです。

 しかし、そうであるならば、例えば液晶パネルにしても米・アップル頼みではなく、単価を抑えて幅広いメーカーに売り先を広げない限り安定した利益率は見込めないはずです」

 シャープ自慢の液晶技術は、これまでアップルから資金提供を受けた三重県の亀山工場にてアイパッド用のパネルを生産して利益を稼いできた。

 しかし、高精細で電池が長持ちする液晶パネルとして開発された「IGZO(イグゾー)」については、新型アイフォーンに採用されていないものとみられる。シャープ首脳陣はIGZO搭載スマホの機種数を増やすと意気込むが、普及の度合いは未知数だ。

「増資で集めた資金は液晶パネル事業はじめ、新たな設備投資に充てるとのことですが、主力取引銀行としては、より一層の資産売却やリストラも考えているでしょうね。シャープのみならず、ソニーやパナソニックなど業績回復の兆しも見られる国内メーカーは、まだ事業の再構築を進めている真っただ中。とても復活と呼べるものではありません」(前出・森岡氏)

 ある電機メーカーの幹部はこんな話を打ち明ける。

「東京五輪の招致委員会がおカネを集めた中に15億円の『経団連(企業)枠』があったのですが、10億円しか集まらなかったと聞きます。そのうち電機業界の“持ち分”は2億円で、結果的には1億円しか集まらなかった。確かに五輪開催による経済効果は大きいが、現状でそんな余裕はありませんよ」

 10月には最先端IT・エレクトロニクス総合展の「CEATEC JAPAN2013」が開催される。事業の選択と集中を迫られる中、シャープをはじめ“日の丸家電”はどこまで存在感をアピールできるのだろうか。

関連記事

トピックス

主張が食い違う折田楓社長と斎藤元彦知事(時事通信フォト)
《慶應SFC時代の “一軍女子”素顔》折田楓氏がPR会社を創業するに至った背景「女子アナ友人とプリクラ撮影」「マスコミ志望だった」
NEWSポストセブン
元プロバスケ選手の真美子夫人と交わした自然なグータッチに、アスリート夫妻らしくて素敵という声が殺到した(写真/ロサンゼルス・ドジャース公式Xより)
大谷翔平、MVP獲得で真美子夫人と歓喜のグータッチ 受賞日は“いい夫婦の日”で喜びも倍増
女性セブン
加古川
【獄中肉声・独占入手】加古川女児殺害事件で再逮捕の勝田州彦容疑者「ケータイをいじりながら、一般人のフリをして歩いて」「犯行後には着替えを用意」と明かしていた“手口”
NEWSポストセブン
SNS上だけでなく、実生活でも在日クルド人への排斥デモやヘイトスピーチが目立つようになっている(店舗SNSより)
「日本人は大好きだけど、もう限界です…」『ハッピーケバブ』在日クルド人の社長が悲鳴、親日感情をへし折る\"ヘイト行為\"の実態「理由もないのにパトカーを呼ばれて…」「脅迫めいた電話が100回以上」
NEWSポストセブン
紅白の
《スケジュールは空けてある》目玉候補に次々と断られる紅白歌合戦、隠し玉に近藤真彦が急浮上 中森明菜と“禁断”の共演はあるのか
女性セブン
騒動の中心になったイギリス人女性(SNSより)
《次は高校の卒業旅行に突撃》「1年間で600人と寝た」オーストラリア人女性(26)が“強制送還”された後にぶちあげた新計画に騒然
NEWSポストセブン
折田氏(本人のinstagramより)と斎藤知事(時事通信)
《折田楓社長のPR会社》「コンペで5年連続優勝」の広島市は「絶対に出来レースではありません」と回答 斎藤知事の仕事だけ「ボランティア」に高まる違和感
NEWSポストセブン
中井貴一
中井貴一、好調『ザ・トラベルナース』の相棒・岡田将生の結婚に手を叩いて大喜び、プライベートでゴルフに行くほどの仲の良さ 撮影時には適度な緊張感も
女性セブン
折田楓氏(本人のinstagramより)
《バーキン、ヴィトンのバッグで話題》PR会社社長・折田楓氏(32)の「愛用のセットアップが品切れ」にメーカーが答えた「意外な回答」
NEWSポストセブン
小沢一郎・衆院議員の目には石破政権がどう映っているのか(本誌撮影)
【小沢一郎氏インタビュー】自民党幹部に伝えた石破政権の宿命「連立をきちんと組まない不安定な政権では有権者に迷惑、短命に終わる」
週刊ポスト
東北楽天イーグルスを退団することを電撃発表し
《楽天退団・田中将大の移籍先を握る》沈黙の年上妻・里田まいの本心「数年前から東京に拠点」自身のブランドも立ち上げ
NEWSポストセブン
妻ではない女性とデートが目撃された岸部一徳
《ショートカット美女とお泊まり》岸部一徳「妻ではない女性」との関係を直撃 語っていた“達観した人生観”「年取れば男も女も皆同じ顔になる」
NEWSポストセブン