世界に“技術力の高さ”をアピールしている韓国だが、そのインフラが次々に崩壊している。
1994年には手抜き工事で漢江にかかる「聖水大橋」が40メートル以上にわたって突然崩落。通行中のバスなどが巻き込まれ、32人が死亡した。翌1995年には、ソウル中心部にあった5階建てデパート「三豊百貨店」が営業中に突然崩壊。死者502名・負傷者937名を出す大惨事となった。
これらは日本をはじめ世界で大きく報じられ、韓国では建設関連法の改正につながった。しかしその後も似たような事故が相次いでいる。2002年7月には、済州ワールドカップスタジアムの屋根の一部が強風で吹き飛ばされた。
また、2009年にもマレーシアのスタジアムで、韓国企業が建設に携わった屋根が突然崩壊する事故が起きた。幸い観客が入っていない時間だったため人的被害はなかったが、マレーシア国内でも「見た目ばかり良くして安全性は二の次か」と批判の声があった。
なぜそうした問題が繰り返されるのか。韓国の建設業界に詳しい、一般財団法人・建設経済研究所客員研究員の六波羅昭氏が語る。
「韓国では、元請け・下請け・孫請けといった重層構造が深刻な問題になっています。日本でもかつて同様の問題が指摘されましたが、韓国では重層化のレベルが違う。下請けに関して規制は一応ありますが、現実には7次請け、8次請けなどざらです。
聖水大橋や三豊百貨店の事故を受けて建設産業基本法などの法律が改正されましたが、現場ではまったく守られていない。業者同士の競争が進み労働条件が悪化する中で、材料代を浮かせようとして、大事故につながるような手抜き工事をしてしまうのです」
先進国になりたいという気持ちが先走り、表面的な高級感や新しさばかりを追い求める傾向が背景にある。7月にサンフランシスコ空港で着陸失敗事故を起こしたアシアナ航空もその象徴だ。
同航空は、機内設備が最先端であるなどの理由で、2012年まで4年連続「エアライン・オブ・ザ・イヤー」を受賞、自社のウェブサイトでも大きく宣伝している。一方で、2008~12年の5年間に同社の操縦士30人が行政処分を受けたことが報じられた。“酒気帯び”で操縦桿を握ろうとしたパイロットまでいた。
ちなみに年間搭乗者数がアシアナ航空の3倍近い全日空は、直近5年間に1件(2009年度)しか行政処分を受けていない。韓国内でも日本統治時代の橋や道路は今も健在で、技術力の差を見せつけている。安全性よりも「見た目(設備)の新しさ」が優先されるハリボテ国家の化けの皮が少しずつ剥がれてきた。
※SAPIO2013年10月号