チベット問題が深刻さを増している。すでに120人もの抗議の焼身自殺が起きており、国際的な批判も高い。チベットで深刻な事態が起きている可能性が高いなか、習近平氏が窮地に追い込まれている。ジャーナリストの相馬勝氏がリポートする。
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習近平の窮地をうかがわせる情報が漏れてきた。
今年3月の全人代ですべての公職を辞任し、引退したはずの胡錦濤・前主席の党内序列が習近平に次ぐ2位に“躍進”したというのである。同時に温家宝・前首相も李克強・首相に次ぐナンバー4に浮上。これは7月22日に四川省で行なわれた享年80の大物学者、周開達・中国工程院院士の葬儀での席次から発覚したものだ。
この葬儀の2日前、貴州省で行なわれた国際フォーラムでも同省トップの趙克志・党委書記が党指導部への謝辞を述べた際、習近平のあとに胡錦濤の名を挙げており、胡錦濤の復活は間違いない。
念のため確認すると、5月2日に行なわれた元党政治局員・倪志福の葬儀では、胡錦濤は習近平ら現役幹部、さらに江沢民に次ぐ序列9位だった。これは政治的異変が起きていると見ていい。
習近平の窮地には後見人である江沢民も焦っているようだ。7月3日、上海でキッシンジャー元米国務長官と会食した際、習近平について、「非常に能力があり、知恵がある国家の指導者だ」と絶賛したと伝えられている。
通常、引退した元幹部が外国要人と会見しても、その動静は公にしないというのが中国共産党の暗黙の了解だ。江沢民の発言は敢えて習近平の失敗をフォローする不自然な物言いといえる。
田代秀敏・ビジネスブレークスルー大教授は「昨年11月の党大会で、胡錦濤ら共青団(中国共産主義青年団)閥は完敗したが、すでに息を吹き返しつつある」と分析する。
※SAPIO2013年10月号