ピアノ、エレクトーン、ギターなどの楽器や、ゴルフクラブ、テニスラケット、スキー板などのスポーツ用品、はたまたバイクやスクーター、電動自転車まで、多くの日本人にとって、「YAMAHA」は身近なブランドと言えよう。
しかし、これだけ多角展開するヤマハの企業としての素顔はあまり知られていない。国民的ブランドはどう作られてきたのか。そして国内市場が縮小する中で、その伝統をどう守っていこうとしているのか。 ジャーナリストの永井隆氏と海部隆太郎氏がリポートする。
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創業125年を超えたヤマハは、スズキやホンダ、河合楽器製作所など世界企業の本社・拠点が多い浜松地域にあって一番の老舗である。現在はピアノをはじめ楽器事業を中心とした「ヤマハ株式会社(以下、ヤマハ(株))」と、二輪事業を中核とする「ヤマハ発動機株式会社(以下、発動機)」が、別会社として同じブランドを展開している。
ヤマハ(株)の2013年3月期売上高は約3669億円(前期比2.9%増)、営業利益は約92億円(同13.6%増)。増収増益だが、2008年3月期には売上高5488億円(営業利益328億円)だったことを考えると、現在は「大底から反転できるか」の重要な時期というべきだろう。売上高の約74%は楽器製造や音楽教室などの「楽器事業」で占める。売上高の54.8%は海外で稼ぎ出す。
一方、発動機の12年12月期売上高は1兆2077億円(同5.4%減)、営業利益は186億円(同65.2%減)。欧州経済危機や円高の影響をもろに受けたが、今期は回復基調にある。 日本での売上高はわずか12.6%。8割以上が海外での売り上げである。両社とも世界市場を相手に事業展開する点は共通している。
※SAPIO2013年10月号