「数十年に一度」(気象庁)の大雨、「30年に一度」の猛暑――今年の夏はそれほど未曾有の異常気象が次々と日本を襲った。気象予報士の森田正光さんはこう話す。
「今後は今年以上に夏はさらに暑く、冬は寒く、極端になっていきます。もはや異常続きの状態になるはずです」
私たちの想像を超える“異次元”の気象が、これから毎年続くことも考えられるのだ。
「異常気象」の原因は、「地球温暖化」といわれている。そのメカニズムを簡単に説明しよう。
大気中には二酸化炭素や水蒸気などの温室効果ガスが含まれている。この温室効果ガスは、太陽から大気や地表が受け取った熱が赤外線となって宇宙に放出されるのをとどめ、地球の平均気温を14℃前後に保っている。地球温暖化は、大気中の温室効果ガスの濃度が高まり、これまで宇宙に放出されていた熱が大気中にこもるようになることだ。
実際、世界の平均気温は1906年から2005年の100年間で0.74℃上昇している。気象庁気象研究所の楠昌司さんは言う。
「この先100年間で、さらに2~3℃上がるのではないかと考えられます。今、北極海の氷が溶けています。それがもっと溶けて、消えてなくなるかもしれません。すると白熊が絶滅するなど、生態系も大きく壊れます」
気温が上昇すると、海水の温度も上がる。すると、温かく湿った空気が発生し、積乱雲ができやすくなる。その積乱雲の大きさが、豪雨などの規模を左右すると前出の森田さんは話す。
「埼玉で竜巻を起こした積乱雲は、直径30kmほどの『スーパーセル』というものです。通常、積乱雲は直径10km程度ですから、その3倍くらい。日本ではこうしたスーパーセルが多発しています。そのため引き起こす豪雨や竜巻も、より大きな規模になるというわけです」
さらに、地球温暖化は単に、一定の気温上昇だけを導いているわけではないと、科学ジャーナリストの大宮信光さんは言う。
「温暖化が引き起こすのは、気候の不安定さです。積乱雲が豪雨をもたらしたかと思えば、一向に雨が降らず干ばつに近いような地域も増えている。猛暑や大寒波が増える一方で、冷夏や暖冬も増えるということです」
今年の3月、北海道・中標津町で猛吹雪の中、父親が娘を助けるために覆い被さるようにして亡くなったニュースがあった。父娘が乗る自動車が立ち往生し、車外に出て徒歩で帰宅を試みたが、あまりの雪と風に身動きがとれなくなったのだ。
中標津町に牧場を持つ、動物研究家のムツゴロウさんこと作家・畑正憲さんは、この悲劇を次のように見ている。
「毎年雪の降る地域ですし、これまでにも吹雪の日はありました。しかし、あの日はその経験や予測を上回るほどの猛吹雪だった。常識を打ち破って襲いかかってきたから、父娘は被害に遭ってしまったのでしょう」
あの父娘を襲った猛吹雪が東京でも起こり得る――大宮さんはこう警鐘を鳴らすのだ。東京など雪に慣れていない地域で起きたらどんな被害が起きるだろう。たちまち交通機関はマヒし、首都機能が停止するのは間違いない。
※女性セブン2013年10月3日号