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すっかり微妙なリニア計画 14年後の自分想像して楽しむ手も

 リニア中央新幹線の走行ルートが発表された。東京五輪と同じく「壮大な無駄遣いではないか」という懸念もある。「無駄遣いを大人の会話として楽しむ」方法を、大人力コラムニスト・石原壮一郎氏が考えた。

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 2027年の開業を目指しているリニア中央新幹線。私たち中年世代が子どもだったころから、「夢の乗り物」としてお馴染みの存在でした。「浮上走行に成功」というニュースを聞いたのは、40年以上前の1972(昭和47)年のこと。そのころは素直にワクワクできましたが、今はまったくワクワクできないのはどうしてなんでしょうか。

 JR東海は9月18日、2027年の開業を目指すリニア中央新幹線の走行ルートと中間駅を発表しました。東京と名古屋を最短40分でつなぎ、神奈川県の相模原市や岐阜県の中津川市など、途中に4つの駅を設けるそうです。開発に携わってきた方々には申し訳ありませんが、リニアは今やすっかり「微妙な存在」になってしまいました。無邪気に「あと14年かあ。楽しみだねえ」なんて言うと、周囲から軽蔑まじりの苦笑を招きかねません。大人としての「もっともらしい語り方」を考えてみましょう。

 どの角度からどう考えても、今さら大枚はたいてリニアを通す必要があるとは思えません。しかし「あんなの、さっさと中止すればいいんだよ」と何のひねりもなく言っているだけだと、何にでもとりあえず反対して悦に入っている単純な人と思われそうです。

 たとえば、同僚を相手に「いったん勢いがついちゃうと、途中でなかなかやめられないからね」「そうだよね」「で、やっちゃってから後悔するんだよね」「たしかにね」「乗りながら『えー、早すぎるわよ』とか言われちゃったりして」「かもね……って、何の話してんだよ!」といった会話を楽しんでみてはいかがでしょう。中止を後押しする力にはまったくなりませんが、大人の粋を表現した気にはなれます。

 あるいは、ちょっと覚めた視点から「今はさんざん文句言ってても、いざ出来上がったらそれなりに盛り上がるんだろうな。東京オリンピックの招致がそうだったみたいに」と呟いて、冷静な分析力らしきものを匂わせてみてもいいかも。ただ「雰囲気に流されやすいのは、日本人の悪い癖だね」と言ってしまうと、定番の言い方に頼っている安易さが強調されてしまいます。そういう傾向があるのは、たぶん日本人だけではありません。

 14年後の自分をイメージしながら語るのも一興。「14年後はもう会社も退職してるから、あんな地下鉄のお化けみたいなので急いで名古屋に行くより、むしろ鈍行でのんびり行くよ」と言えば、風流な一面をチラつかせることができます。ま、いざ開業したら喜んで乗っている可能性は大ですけど。

 はたして、予定通り開業したら自分の心境はどう変わるのか。それを考えると、ちょっとだけワクワクできなくもありません。大人としては、地に足の着いたスタンスを貫きたいもの。リニアだからといって浮足立たたないように気を付けましょう。と言いつつ、まだまだ先の話に対してこんなこと言っている時点で、十分に浮き足立ってますね。

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