中国共産党の最高幹部だった薄熙来・元重慶市党委書記(元党政治局員)の裁判が8月下旬、5日間にわたって開かれ、生々しいやりとりが交わされ、大きな関心を呼んだが、薄熙来氏が囚人服を着ずに、平服だったことに市民の間から疑問の声が高まっている。その理由について、北京誌「大衆文摘」は「薄氏が党の最高幹部だったからではない」としている。
中国の裁判では、被告は黄色と白のストライプが入った囚人服を着て、前にした両手に手錠をかけられている姿がたびたびみられる。この姿はよくテレビニュースでも映し出されている。
しかし、薄熙来氏の裁判では、薄氏は白いワイシャツの上に、黒いジャンパーを羽織って登場しており、囚人服は着せられていなかった。
さらに、薄氏の場合は手錠もかけられず、立たされることもなく、坐って顔の前に設置されたマイクに向かって証言していた。
これは薄氏ばかりではない、今年7月に裁判で執行猶予付き死刑判決を受けた劉志軍・元鉄道相も裁判では普段着姿で、囚人服は着ておらず、手錠もかけられていなかった。
このような“特例”はこれまで政治局員で逮捕され、裁判にかけられたのは2007年の陳良宇・元上海市党委書記の例がある。
同じく2007年7月の元全国人民代表大会(全人代)の成克傑・元副委員長、2003年の李嘉廷・元雲南省長もスーツにネクタイ姿で、手錠なしだった。
この理由について、同誌は中国司法省関係者の話として、囚人服を着用させるのは、「一目で囚人と分かり、逃亡した際、一般市民とすぐに見分けが付き、捕える目印になるためであり、通常は逃亡を企てそうな刑事犯に囚人服を着せることにしている。薄氏のような元最高幹部の場合、よほどのことがない限り、逃亡の恐れがないため、裁判でも平服が許される」としている。
手錠についても同様に、囚人が逃亡の恐れがある場合、かけられるというわけだ。同誌は、もう一つの別の理由として「警官らに暴力を振るう可能性がある囚人に用いられる」ことを挙げる。
薄氏など元党・政府高官の場合、裁判中に逃走する可能性が低く、暴力を振るう心配もほとんどないため、一般の刑事犯のように囚人服を着て、手錠をはめる必然性がないというわけだ。
しかし、このような理由も、中国では幹部か、幹部でないかの“逆差別”かもしれないとも思えるのだが……。