芸能

松田龍平と翔太 役者としての違いと父から受け継いだDNA

 兄弟で活躍する俳優は多いが、今もっとも注目を集める役者兄弟はこのふたりかもしれない。NHK連続テレビ小説『あまちゃん』のミズタク役で、幅広い視聴者の注目を集める松田龍平(30才)。一方、数多くの人気ドラマに出演、10月スタートの“月9”『海の上の診療所』(フジテレビ系)に主演する松田翔太(28才)。ふたりの俳優としての魅力とその違いについて、コラムニストのペリー荻野さんが解説してくれた。

 * * *
  龍平さんと翔太さんは、出演する作品の傾向にも違いがあります。そのせいか、キャラクターにも違いがあるように思います。

 龍平さんは映画『御法度』で16才でデビューしていますが、この頃から、美少年といってもジャニーズ系とはひと味違う怪しげな感じを漂わせていて、面白い男の子が出てきたなというのが最初の印象でした。その後のキャリアを見ても、テレビドラマよりも映画を中心に活躍してきた役者といえます。

 演じる役柄のキャラクターにも龍平さんは特徴がある。何を考えているかわからない役とか、癖のある役が多くて、恋に落ちるような役にはあまり縁がない。例えば、瑛太さんとW主演した映画『まほろ駅前多田便利軒』では、定職に就かずふらふらして、なんでも屋さんを手伝うふりをして何にでも首を突っ込むという、ちょっと変わった役なんですけれど、そういうものを演じさせるとすごくいい味を出しますよね。

『あまちゃん』では、あまり表情には出さないけれど、情熱や温かいものを持っているミズタクが彼のハマリ役になった。『御法度』から蓄積してきた彼のキャラクターのイメージがあるからこそ、内に感情を秘めたミズタクという役に説得力が出てきています。

 一方、翔太さんの出演作はテレビドラマが多いですよね。今回、月9で主演するようにテレビドラマの王道を進んでいます。『海の上の診療所』で演じるのは三枚目の医師です。『LIAR GAME』のようにクールでかっこいい役もやりますが、映画『名探偵の掟』やドラマ『ドン☆キホーテ』のようにコミカルな役も演じられる。どこか陰のある龍平さんとは対照的に明るいイメージがあって、出演作のジャンルも龍平さん以上にさまざまです。

 ただ、ふたりともアイドル的な2枚目とは違う、どこかアーティスティックな雰囲気があります。それはお父さん、松田優作さんのDNAを受け継いでいるからかもしれません。

 彼らの演技に“松田優作”を見るときもあります。とくに龍平さんは、背が高くて猫背っぽい姿勢や、セリフを言うときに下唇がボソッと動く瞬間は似ているなと感じますね。ミズタクがぼーっと立っていると、なんとなくお父さんの面影を感じるときがあります。

 優作さんの代表作ドラマ『探偵物語』もどこかコメディータッチでしたが、怖い顔をしながらも面白いことを言う、みたいなところがありますよね。龍平さんも翔太さんも、そういう芝居をとても自然にできる。また、優作さんのように、いるだけでオーラが出ているというか、役者としての存在感みたいなものを持っています。それは彼らが父親から受け継いだ、内面から醸し出されるキャラクターがあるからだと思います。

 ただ、優作さんのように、役者仲間と殴り合いのけんかをしたとか、酒を飲んで暴れたとか、“武勇伝”の部分は息子にあまり引き継がれていないのかもしれません(笑い)。

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